バブリーたまみさんを自宅取材

私のすべてを犠牲にする育児をやめ、「ママである自分自身を大事にしたい」──。そんな想いで、ママ界のエンターテイナーとしての活動をするバブリーたまみさん(通称、バブたまさん)。弱い母の気持ちを代弁したインスタグラムは、今では約4万人のフォロワーに支持されています。元々、会社員だったバブたまさんの人生を変えたきっかけについて、話を伺いました。

見失った自分を結婚式の余興で取り戻す

──ママの代弁者シンガーとして、先日もセカンドアルバムを発売されるなど、活動の幅を広げてらっしゃいますが、そもそも「バブリーたまみ」として、活動するようになったきっかけはなんだったんですか?

 

バブたまさん:2016年の8月に長男を出産しまして。ママになり右も左も分からないなか、自分のすべてを犠牲にして育児に明け暮れていました。

 

もともと、明るい性格だったと思うのですが、産後は「お母さんなんだから、はじけたり、派手な格好をしてはダメ落ち着かなきゃ」と自分自身にも、無意識にブレーキをかけるようになってしまい。自分自身を見失ってしまったんです。

 

そんなとき、たまたま地元の親友から結婚式の余興を頼まれました。当時は、登美丘高校ダンス部のバブリーダンスが流行っていた時期。私も真似してソバージュヘアのかつらと肩パッド入りのスーツ、バブル時代のメイクをして、一人で踊ってみたんです。

 

バブリーたまみ
友人の結婚式の余興でバブリーダンスを披露

──バブル世代じゃないのにそのスタイルなのは、その理由なんですね。

 

バブたまさん:そうです。1日限りのバブリーたまみのつもりでした。でも、それがすごくウケて!Youtubeにアップしたところ 、再生回数が100万回を超えたんです。

 

その動画を地元の子育て支援センターの方が見ていたようで、イベントの依頼があり、今度は親子向けにパフォーマンスをすることになったんです。そこでもママたちがめっちゃ笑ってくれて。

 

母親になってから殻に閉じこもっていた自分を、取り戻せた瞬間でした。

私の中の「バブリーたまみ」は待ってくれない!

バブたまさん:その動画もアップしてみると「こんなお母さんサイコー」「元気がでる!」というコメントをたくさんいただきました。その言葉を読んでいるうちに、「自分と同じように育児に葛藤しているママたちに、何かできることがあるんじゃないか」と自問自答するようになって。

 

当時、具体的なことは何も考えていませんでしたが、“バブリー”ってブームでもあったので、「バブリーたまみをやるなら今しかない。バブリーたまみは待ってくれない!」 ──そんな気がして、その2か月後には、会社員を辞めました。

 

──ご主人は、反対しなかったんですか?

 

バブたまさん:パパは「ママたちを元気にするためにやるんだったら応援する」「やってみたらいいじゃん」と言ってくれましたね。

泣きながら伝えたママへのメッセージがCDデビューのきっかけ

バブリーたまみ
最初は0組だった親子向けイベントも今や人気に

──バブリーたまみとして、どんな活動から始めたんですか?

 

バブたまさん:最初は親子向けのイベントを開催したんですが参加者は0組(笑)でも、会社を辞めたからにはやるしかないと、チラシをポスティングしたり、駅前で親子を見つけては声をかけたりと、泥臭い営業活動から始めました。そうしたら、34組とイベントへの参加者が増えてきて。

 

──そこから、今のような活躍に?

 

バブたまさん:転機は子育て関連のイベントに前座として出演させてもらったことですね。人様の曲をアレンジして歌って、クセの強いパフォーマンスを披露。大爆笑させた最後に、泣きながらママたちへ「こんなママもいるんだよ!自分自身を大事にすることが、ママにとって、子育てにとって大事なことだから!」と。

 

それがママたちに共感してもらえて、少しずつ認知されていきました。次第に「私の地方にも来てほしい」いうお声をいただき、ファンの方の自宅に泊めてもらいながら全国ツアーを決行しました。

 

──ファンの方の家ってすごいですね(笑)でも、そこからどうやってCDデビューに?

 

バブたまさん:その会場にキングレコードのプロデューサーさんが来ていました。私は某ミュージシャンの曲をアレンジして歌っていたんですけど、偶然にもその曲をプロデュースしていたのがその方で。歌い終えた後、その方から呼びとめられました。

 

やばい、著作権のことで使用料を請求される、って焦りました(笑)。そうしたら、「ママたちに伝えているメッセージをオリジナル曲にしてつくらない?」と、声をかけてもらい、CDデビューが決まったんです。

ママ自身が幸せにならないと子どもを幸せにできない

バブリーたまみ
歌を通して伝えたいのは「ママの笑顔がいちばん」ということ

──9月には2枚目のアルバムもリリースされましたね。歌を通じて、伝えていきたいメッセージは?

 

バブたまさん:一番伝えたいのは「ママの笑顔がいちばん」ということ。子どもができると、どうしても子ども中心になってしまいますよね。でも、ママ自身が満たされていないと、子どもを満たすことはできないし、ママが幸せにならないと、子どもを幸せにすることができないと思うんです。

産後うつで自分を責めて、追い込まれた経験が…

バブたまさん:実は、私自身、1人目を出産した後、産後うつになりました。息子と二人きりになると、恐怖感に襲われて、子どもの泣き声がステレオの大音量のように聞こえてしまって。私を苦しめるために泣いているの?私がダメなママだから泣いているの?と。

 

当時は、ママは自分を犠牲にすることが当たり前だと思っていたので、ヒステリックになり、「残業になる」と夫からLINEが来た瞬間、立ち上がれなくなることもありました。

 

子育ては孤独で評価されないし、100点満点が当たり前で加点されないから、どんどん追い込まれていきますよね。それでも、この子は私がみる、ママなんだから…”と、思って頑張ってしまって、体に異変を感じるようにもなっていました。

ゆっくりコーヒーが飲める幸せ。育児も距離は必要と気づいた

──そこから、どうやって立ち直れたんですか?

 

バブたまさん:ある時、息子を数時間預けることができて、スタバであったかいコーヒーを飲んだんです。何も気にせず、ゆっくりコーヒーが飲める、好きな本が読めることに感動して。その後、息子がいつも以上にかわいくて、愛しく思いました。

 

人それぞれだと思いますけど、私の子育てには「息子との距離」が必要だと気づいたんです。それから、息子と少し距離を取りながら、仕事(バブたまの活動)をするようになり、自分を取り戻せました。

 

そんな経験をしたからこそ、ママたちに「自分を犠牲にして、責めるのはやめよう」「頑張りすぎないで」と伝えたい。いろいろなママがいて、どんなママでもいいということを。

 

私自身けっして強くはないので、そう伝えながら自分にも言い聞かせている部分はありますね。「お母さんはこうあるべき」「ママなのに」という文化を、これからもっと壊していきたいと思っています!

 

PROFILE バブリーたまみさん

1988年10月27日、福岡県出身。OLからママ界のエンターテイナーに。歌やパフォーマンス、YouTube、SNSを通して「ママの笑顔がいちばん」というメッセージを伝える活動を行っている。二児のママ。9月23日、ママの処方箋曲満載のアルバム「ママ、いっしょに幸せになろうね~爆笑サプリメントソングス!!~」をキングレコードから発売。YouTube MVも配信中。

 

文/山本初美 撮影/新井加代子