小学6年生の夏休み明けから受験勉強をはじめた、漫画家・細川貂々さんの息子さん。受験勉強開始前の息子さんは、漫画とゲーム漬けの日々だったと言います。

 

前回の、「合格率0%から塾なし、たった4カ月で私立中学に合格できたワケ」では、お父さんが勉強を教え、お母さんである細川貂々さんが精神的なフォローを担い、三人四脚で受験を乗り切ったお話を伺いました

 

今回は、約4カ月という超短期決戦のなかでも変化があったという息子さんの内面の成長について聞きました。

自分で納得できると、子どもは動く

──自分から「受験する」と言い出した息子さん。とはいえ、漫画やゲームはすぱっとやめられましたか?

 

細川さん:

いいえ。最初のうちは何度も逃避して。自分自身ではなかなかコントロールできませんでした。なので、ある時点で、受験が終わるまでは禁止にして「終わったら好きなだけ見ていい」というご褒美を設けました。

 

あと、ツレが「受験自体もゲームみたいなもんだ。必ずゲームは終わる。ゲームオーバーになったとき、泣いて過ごしたいのか、笑っていたいのか」とかけた言葉は、腑に落ちたようでした。

 

──ゲームっ子には心に刺さるひと言ですね。勉強から逃げそうになったときは、どう乗り切ったのでしょう。

 

細川さん:

やると決めた課題をやらなかったときは、その部分を実際に見せて、理由を考えさせました。

 

たとえば、今日はこの10ページを解くと決めていたのに、やらなかった。漠然と「なんで?」とか「やらないとだめでしょう」と言うのではなくて、目の前でその10ページを見せるんです。つまり、できなかったことを“可視化”させた。そして、その理由を考えさせる。すると、子ども自身も「なんでこれをできなかったんだろう」と考えはじめて立ち直れるみたいです。

 

親ができなかった理由を述べるのではなく、子ども自身に原因を見出させました。

 

──最初の模試を受けるまでは過去問の解き方も自分で考えさせたということですが、幼少期からそういう方針で子育てされてきたんですか?

 

細川さん:

そうですね。いきなり大人が答えを教えるんじゃなくて、まず自分で考えさせることは大切にしていました。

 

ツレの思い描いていた子育ての理想は、「コミュニケーション力をつけて、幅広い価値観を持つ」ということでした。しかし、息子は人とコミュニケーションをとることが得意ではなく、殻にこもるタイプだと幼稚園の頃に気づいたんです。そこで小学校からは、本人の素質をつぶさずに、できないことは無理にやらせないという方針に変更したんです。のびのびと、やりたいように生きていると思います(笑)。

 

──なるほど。受験することになった動機、「組体操」を無理強いしなかったのもそのひとつですね。

 

細川さん:

公立中学校に進学すると必修の「組体操」をしたくない、というのも受験動機のひとつでしたね(笑)。実は「運動会の組体操に参加したくない」と言い出すまでにも、ときどき「学校に行きたくない」ということがありました。たいがい春の新学期です。

 

私たち夫婦も、どちらかと言うと学校はあまり好きではなかったので、「そうか。分かるよ、分かるよ」という感じで。じゃぁ、社会勉強しよう!と、大学の学食に連れていったり、山登りに行ったり。そうすると、大抵次の日にはけろっとして「学校行くわー」と出かけていくんです。

 

──息子さんを大切に育てられていることが伝わってきます。自分自身を受け入れてもらえたという安心感を得て、心が落ち着くのかもしれませんね。

 

細川さん:

理由は聞いていませんが…、そうかもしれないですね。