父が教え、母は見守ることに徹底

──家で勉強するにあたって、心がけたことは何ですか?

 

細川さん:

ツレは息子を常に観察して、行き詰まっていたり、何か変化が見えたらすかさず「どうした?」とそばに行ってフォローしていましたね。解き方を教えるときには、息子が理解しやすい伝え方を探しながらやっていたように思います。

 

──細川さんも教えたりしていたのですか?

 

細川さん:

私は大学受験もしていないので、勉強に関してはちんぷんかんぷん。口を挟まず、ツレに任せることにしました。ツレが息子を指導して、私はその様子を見守ってるという構図かな。息子が愚痴を言ってこられる場所になりたいなと。

 

──「見守る」というのは簡単なようでいて難しいですよね。意識した言葉がけなどはありましたか?


細川さん:

とにかく、否定的なことは言わないようにしました。ツレが厳しいことを言ったりしたときは、さっと間に入って「がんばってるよ!」「これだけやってるんだからうまくいくよ」などと言って息子を守る役割をして。

 

問題が解けなかったり、落ち込んでクローゼットのなかにこもったときは、「大丈夫、大丈夫」となぐさめたり。そうすると落ち着いてまた机に向かっていました。

 

夫は指導、私は見守る。それぞれの役割で息子をサポートしたのが、わが家らしい受験対策だったと思います。


・・・


もちろん、両親の協力態勢に加え、息子さん自身のがんばりがあったことも確かです。次回は、受験を経て変化した息子さんの精神的な成長についてお届けします。

 

・・・

 

PROFILE 細川貂々(ほそかわ・てんてん)さん

1969年生まれ。漫画家・イラストレーター。1996年、集英社『ぶ~けDX』にてデビュー。パートナーの闘病を描いたコミックエッセイ『ツレがうつになりまして。』『イグアナの嫁』シリーズ(幻冬舎)は映画化、ドラマ化もされた。偏差値28、合格率0%から息子の中学受験に挑んだ『なぜか突然、中学受験』(創元社)が2020年7月発刊。最新刊は『もろくて、不確かな、「素の自分」の扱い方』2020年9月刊(幻冬舎)。

 

取材・文/笠原美律 撮影/東郷憲志