女の子がスポーツを続けない5つの理由
──習いごとなどをきっかけにスポーツを始めるのは、女の子よりも男の子が多い。さらに、15歳以降でスポーツをやめる女の子は男の子の約2倍。これはなぜでしょう。
ナイキ広報担当者:
ナイキとローレウス財団が行った調査によると、次の5つの要因が関係していると私たちは考えます。
(1)女の子の興味に合うスポーツや遊びの機会が少ない (2)社会の性の固定観念や社会からの女の子が果たす役割への期待が、スポーツとマッチしない (3)女の子は男の子に比べて差別を受けやすく、スポーツに参加したり、続けたりするのに重要な自信や自己固定観念を喪失しやすい (4)ロールモデルとなる女性コーチや教員が男性よりも少ない (5)思春期による体や心の変化をサポートするような環境が整っていない
ひとつ目の「女の子の興味に合うスポーツや遊びの機会が少ない」は、男の子と比較すると、やはり女の子はスポーツ分野に親しむきっかけが少ないことが明らかになっています。野球やサッカーの習いごとでは、「女の子は受け入れていない」というチームもありますよね。
その背景にあるのは、ふたつ目の「社会の性(ジェンダー)の固定観念や、女の子が果たすべきとされる役割への社会の期待がスポーツとマッチしない」ことだと思われます。
──「男の子らしさ(活発・行動的)」「女の子らしさ(かわいい・優美)」のような世間や親が抱きがちな既存のイメージが、習いごとの選択にも影響を及ぼしているのですね。
ナイキ広報担当者:
そういった無意識のジェンダーによる固定観念が、スポーツ競技の選択肢を狭めている側面はやはり少なくない、と私達は考えます。
また、3つ目の要因として「女の子は男の子に比べて差別を受けやすく、スポーツに参加したり、続けたりしていく場合に重要な自信や自己肯定感を喪失しやすい」というものがあります。
これにはさまざまな要因が絡まり合っているのですが、第一に成長するにつれて小学校高学年になると男女間での身体能力に差が出始めます。
そうした男女の差を考慮せずにスポーツを進めてしまうと、特にサッカーや野球などの集団競技においては、男女混合であると、どうしても男の子がフィールド(競技場)を独占してしまう傾向になりがちです。そのため前に出ることをためらってしまう女の子も少なくありません。
また、社会から求められる「女の子はこうあるべき」という姿を意識してしまう女の子も多く、スポーツや運動をする時にも女の子のほうが挑戦をためらい、失敗を怖がり、躊躇してしまう傾向があるという理由とも無関係ではありません。
そして4つ目は「“スポーツをする女性”のロールモデルが少ない」こと。スポーツの世界における指導者の男女比は、男性が約70%に対して、女性は約30%と大きな差があります。女性コーチや女性の教員の数が、男性と比べると圧倒的に少ないのです。これもまた、女の子がスポーツを途中でやめてしまう大きな要因です。
──女性のロールモデル不在という現実が、女の子がスポーツを身近な存在として捉え、続けていくことの心理的妨げにもなっているのですね。
ナイキ広報担当者:
そうです。そして女性の指導者が少ないことが、5つ目の要因である「思春期による女の子の心身の変化をサポートできる環境が整っていない」にも繋がっています。