「21世紀型スキル学習」は、生きていく上での武器になる
──先ほどの授業内容にもあった「21世紀型スキル学習」。世界保健機関(WHO)が提唱するライフスキル(※C)や、ATC21sが提唱する21世紀型スキル(※D)などを参考に作られた、未来をよりよく生きるためのプログラムとのことですが、なぜこの学習が必要なのでしょうか?
熊谷さん:
N中等部には多様な生徒がいますが、周りと少し違うな、という個性を持っている人がすごく多いんです。そういった子は、小さな失敗でも大きく感じて、挑戦や人間関係を怖く感じてしまうこともあります。
「21世紀型スキル学習」では、自分の思考や感情をトレーニングすることで、コミュニケーションの取り方や、相手を傷つけずに自分の思いを伝える方法を身につけることができます。
自分が自分らしく生きていくために、物事のとらえ方や伝え方を工夫するスキルが身につけば、生きていく上での武器になるんです。私は私のままでいい、と体感しながら学習することで、自信にもつながり、課題解決への力になります。
──思考や感情のトレーニングというと、具体的にはどんなことを学ぶのでしょうか?
熊谷さん:
経産省の「未来の教室」実証事業
(※E)で、開発を行ってきた「21世紀型スキルプログラム」では、
- 情動スキル:怒りや不安を客観視し、能力を発揮する
- 協同/協働スキル:他者と関係を築き、協働して物事に取り組む
- 思考スキル:デザインやアート、論理や類推の思考メソッド
- 課題解決、価値創造:身近な課題を発見して解決する、価値を創造する
という4つのトレーニングを段階的に行います。
ワークにゲーム要素を入れて遊びながら、自然に自分の内面を認識し、課題解決にむけて他者と協働する力が身につく形の授業にしています。
──中学生に感情やコミュニケーションのトレーニングというと、ちょっと難しい感じがしますが…。
長尾さん:
こんなふうに書いてあると難しそうですよね(笑)…例えば、昨日行った授業では、
「アイスを家族や兄弟に食べられた時の怒り度合いは、MAXが10だとするとどのくらいですか?」
というワークがありました。その怒りに対応するためにはどうしたらいいか、とチャットで意見を出してもらいます。
「私は家族にアイスを食べられても2だけど、6っていう子もいた!」と、人によって違うと気づくことが大事だったりします。
──出た意見は、クラスでまとめたりするんですか?
熊谷さん:
いいえ、正解に導くわけではないんです。「怒りはこういうふうにコントロールしましょう」というアドバイスもしません。
怒りという感情に出会ったときに、自分がどう反応をするか、周りの人と違うのか同じなのかを知った上で、どういう行動を選ぶかを自分で考えることが大切です。
ただ、この感情の存在を知ることが、実生活にも活用できているようです。「友だちとケンカしないですんだよ」と報告してくれる子もいましたよ。