夏の疲れは秋に出やすいといわれますが、コロナの影響でさまざまな行動が制限された今年に限っては、例年以上に、多くの子どもたちがストレスを抱えています。

 

withコロナの今の時代、子どもたちの不安感は高まっています。その不安をときほぐすためにマインドフルネスが役立ちます」

 

そう語るのは、こころの幸せ教育研究・実践者で、一般社団法人heARTfulness for living協会代表理事の戸塚真理奈さん。

 

マインドフルネスとは、「今この瞬間の自分の内(心)と外(他者や外部環境)に、しっかりと意識を向けている」状態のこと。自分の感情や外の世界で起きていることを観察することで、心は穏やかに整い、ありのままに受けとめることは自分や他者を肯定することにもつながっていきます。

 

新刊『感情の知性(EQ)を伸ばす 学校と家庭でマインドフルネス! 1分からこころの幸せ・安心を育む63のワーク』(学事出版)で、親子で簡単にできるワークを提唱する戸塚さんに、今の子どもたちが抱えている不安と家庭でもできる心のほぐし方について伺いました。

 

子どもは大人のイライラや不安を敏感に感じ取る

——戸塚さんは2015年から子ども向けマインドフルネス教室を主宰されていますが、今の子どもたちはどんなストレスを抱えているのでしょう。

 

戸塚さん:

テクノロジー主導になった今の世の中では、すべてが目まぐるしく変化していますよね。多くの大人はその変化についていこうと必死になっていますが、便利になった反面、スマホの普及によって常時オンライン状態となり、息抜きの質や時間はどんどん減っています。

 

それは子どもにとっても同じこと。子どもは大人と違ってストレス解消法に触れる機会が少なく、それでいて大人が思う以上に、親や先生など周囲の大人のイライラや不安を敏感に感じ取っています。

 

加えて、親に対して「自分が何か悪いことをしたから(お母さん・お父さんが)イライラしている」と自分を責めてしまう子どもも少なくありません。特に今年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、子どもたちを取り巻く環境にも大きな変化が生じましたよね。

 

そういった不安定かつ予測不能な空気に呑まれぬよう、自分で自分の気持ちをゆったりさせたり自分軸を大切にしたりする方法を子どもと大人に伝えられたら、という思いで執筆したのが『感情の知性(EQ)を伸ばす 学校と家庭でマインドフルネス! 1分からこころの幸せ・安心を育む63のワーク』です。

日本の子どもの心の幸福度はワースト2位

——最新調査でも、日本の子どもの「精神的幸福度」は世界ワースト2位という結果が出ています(※1)。コロナ以前から、日本の子どもの心は疲れていた、ともいえるのでしょうか。

 

戸塚さん:

「身体的健康」は1位なのに、「精神的健康」、すなわち心の健康は37位(調査対象国38カ国中)という結果は、残念ながら今の日本の子どもたちが置かれている状況を象徴しているように私は感じます。

 

心の健やかさに乏しいということは、つまりは自分に自信がない、自己肯定感が低い、幸福感や安心感、将来の展望や楽しみをあまり感じられていない、とも言い換えられるでしょう。

 

日常的に「自分なんて○○」「どうせ○○」という自己批判や倦怠感やネガティブ感情を持ち続けることは、失敗や挫折、困難といった辛い状況になったときに心が疲弊して、折れたり燃え尽きたりしてしまうリスクをはらんでいます。

 

自信がない、自己肯定感が低いという状況は多くの場合、他者と比較して自分のことをとらえたり、大人の期待や価値観をものさしにしたりすることの積み重ねで起こるのではないでしょうか。

 

そのような自分ではない誰かを主体とした意識や、溢れる情報といったノイズから自身を解放し、自分の感情や内軸にじっくりと目を向けるマインドフルネストレーニングは、現代に生きる子どもたちの心の健やかさに必要です。反復練習がカギとなりますので、ぜひ日頃からマインドフルネスを役立てていただきたいと思います。 … そこで次ページでは、子どもの疲れた心を優しくほぐし、安心感を高める、簡単な呼吸のワークを戸塚さんに教えてもらいます。