「でも〜」が口ぐせの母親に悩む女性

「さらに困ったことに、他者中心の意識を持っていると、なかなか相手の意見に賛同できません。なぜなら、他者中心の考えは、自分の意思で物事を決められず、人と交渉することが苦手。一度相手に同意したら、従わなくてはならないと考えます。つまり、対等なコミュニケーションの取り方がわからないのです

 

他者中心で生きていると、競い合う(=従うか、従わないか)という視点でしか人との接し方をとらえられません。とくに、親子という遠慮のない関係においては、その傾向が強く現れます。

 

「たとえば、娘が意見を言った時“本当にそうかね?” “でも、それだと〜”などと、賛成しない言葉が口ぐせになっている母親もいます。これは、きちんと話を聞き、内容を理解する前に反射的に身構え、否定しようとしているためです。そうすると、娘は母親が自分のことを受け入れてくれないと感じ、失望してしまいます」

 

こうした会話を日常的に行っていると、親に肯定してもらえない子どもの心の奥底は傷つき、「親から認めてほしい、愛されていない」という思いを募らせていきます。その満たされなさは大人になっても解消されません。ずっと痛みを抱え続けてしまうのです。

 

自分の子どもに同じことをしないようにするには?

他者中心の考え方をしていると、内心はガマンと不満でいっぱいに。そのいら立ちは、一番身近な存在である子どもに向かいやすくなるといいます。

 

「そんな母親に育てられた娘もまた、他者中心の考えを受け継ぎ、自分の子どもにも同じことをしてしまう恐れがあります。こうした負の連鎖を断ち切るためには、“自分の代で終わりにする”と決意し、考え方そのものを変えていく必要があります」

 

他人の考えに振り回されることなく、自分らしさを大切に生きるにはどうしたらいいでしょうか。次回は、その方法についてお伝えします。

 

PROFILE 石原加受子さん

心理カウンセラー。「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員、日本ヒーリングリラクセーション協会元理事、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。

 

文/齋田多恵