価値観の違いに苦しむ母娘

口も聞かない、ケンカばかりそんなことはない。むしろ、母親とよくお茶したり、一緒に出かけたりもするのに、大人になった今でもふとした瞬間、母親との関係に息苦しさを感じる――そんな女性が増えているといいます。なぜ、そう感じるのでしょうか。その理由と、そこから抜け出す方法を心理カウンセラーの石原加受子さんに伺いました。

仲のいい母娘の関係に見えても…

「最近は、ごく普通の家庭で育ち、結婚し、子どもにも恵まれ、仕事もしている。一見すると幸福そう。でも、心の中に、何か苦しいものをずっと抱えている。そういう相談が増えています。そして、その自分が苦しむ対象は、母親なのです」と石原さんは言います。

 

まずは、実際にどのような相談があったか見ていきましょう。

 

<Case1> 母親の「自由に生きて」の言葉とは裏腹に、意見を押しつけられウンザリ

ある女性は、子どものころから母親に「自分はやりたいことをやれなかったから、あなたは自由に生きなさい」と言われ、育ってきたといいます。

 

ところが、大人になり女性が自分で決めて行動しようとすると、「それは難しいんじゃないの?」「こっちのほうが安全だと思うわ」などと心配され、自分の気持ちとは違う道を選ぶようアドバイスされます。

 

母親に意見されると、それ以上は何も言えず行動できずじまい。もう結婚して子どももいるのに、つい「こういうことをしたら、お母さんはどう思うだろう?」と考えてしまいます。いつも母親の言いなりになっている気がして、自分の人生を歩んでいる実感が持てません。

 

<Case2> 母親のグチは嫌なのに同情心が上回り、イライラすることも

なにかと電話してくる母親。急ぎの用かと思えば、父親や近所の人の不平不満をこぼします。

 

その女性は、これまで母親が子育てを最優先し、やりたいことを後回しにしてきたことを知っています。苦労した母親に同情する娘は、「お母さんは私を大切に育ててくれたんだから、話くらい聞かなくちゃ…」と思い、グチに付き合います。

 

けれど、女性も仕事や育児に追われる毎日。相手の都合も考えず、ひんぱんにかかってくる電話にイライラすることも。それでも、電話を断ったら母親が悲しむのではないかと思うと、自分の気持ちを伝えられません。いつもガマンしているうえに、母親に振り回されている気がしてしまいます。