外国人の夫・トニーさん、中学生のトニーニョくん(15歳)と3人で暮らす漫画家の小栗左多里さん。

 

夫婦で子育てをしていくなかで「異文化で育った者同士はどうやったら折り合えるのか?」と試行錯誤した経験から、考えたことを語っていただきました。

 

今回のテーマは、「ドイツの小学校での日常」について。真面目で規律正しいイメージがある一方、実際の学校生活はなかなか自由溢れるものだったようです!

授業中に公園でアイス!?ベルリンの小学校の「子どもは遊ぶべき」思想に共感!

「ドイツの小学校」というと、「規律正しい」というイメージを持つだろうか。「ドイツは日本に似てるから」と聞いていたけど、息子が行った小学校は日本の「全員同じできっちりしている」感じとはだいぶ違っていた。

 

まずドイツでは、小学校に入る年齢に幅がある。6歳でみんないっぺんに入らないといけないことはなく、簡単に言うと「早め」と「遅め」があり、小学校に行けるくらい十分発達しているかどうかを考えて選べるのだ。時々聞くのが、保育園で仲良い子たちと一緒に行かせたくて早めに入ったものの、ついていけずに「留年」するというパターン。

 

ただ「留年」はそんなにマイナスイメージではなくて、多くの人が「わからないまま学年が上がるより、きちんと理解できてからの方が良い」と考えている様子。なので、1回するくらいは珍しくない。2回の子も、3回した子も聞いたことがある。反対に飛び級もあるので、少数とはいえ単純に年齢=学年ではないのだ。

 

さて、このような入学や留年に関しては似ているけど、ドイツは州によってかなり違う部分があり、ベルリン市内でも学校によって本当に千差万別である。さらに息子が行っていたのは、ドイツ語と英語を使う公立のインターナショナルスクールで、そもそも普通の公立ではない(学費無料なのは同じ)。なので、あくまでも一つの例として読んでほしい。

 

先生も子どもたちも、自由度が高い!

1クラスは22〜25人、1学年6クラスあるのだが、先生の裁量の幅が広い。例えば1年生だったある日、息子が帰ってきて「今日は天気がよかったから公園に行って、アイスを買ってもらって食べた」と言う。授業中に遊びに行ってアイス!?何それ?3回聞き直した。イベント?いや、どうも時々ある「先生の気分による突発的事案」らしい。

 

子供は遊ぶべき、という感覚が根底にあるとは思う。これもドイツ共通だが、低学年は午前中しか授業がない小学校が多く(学童はある)、宿題が出ないのもその表れだし、夏休みなど長期のお休みにも宿題を出すことは「禁止」である。それにしても、公園でアイス。 小5でもやっていたらしい。お金はクラスの活動費から出ているのだろうけど、先生が代わってもやっていたのだから、その支出は認められているってことだ。ちなみに先生も食べる。

 

もともと午前中に食べるおやつを持っていく習慣がある上、学食で買えるので、校内や帰り道で自由にお菓子など食べている子も多い。昔、母の手作りドーナツを校内で友人たちと食べて、首謀者として先生に呼び出された中学生の私はなんだったんだ。

 

通学手段も、駐輪場にはキックボードがちらほらあったので「あ、これもいいのか」と驚いていたら、小3の時、同級生何人かが下校時にスケボー抱えているのを目撃。「もしかしてあの子達、スケボーで学校来てるの?」「うん」。小3で、しかもノーヘル!危なすぎて、私なら絶対止めるけど。

 

なんというか、最初から「あれがダメ、これがダメ」と言われる感じではなくて、やってみてダメなことだったら注意される、というような雰囲気。ドイツ育ちでない親子も多かったけど、めちゃくちゃになるわけでもなかった。細かい規則でガチガチにならないことは誰にとってもラクだし、そのぶんの力を他で使える。日本ももう少しゆるくてもいいんじゃないだろうか。少なくとも、母のドーナツ食べても風紀は乱れないぞ!

 

 

 

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文・イラスト/小栗左多里