『喜劇 愛妻物語』は、『百円の恋』や『嘘八百』シリーズの脚本家として高い評価を受けている足立紳監督が、自身初の自伝的小説「乳房に蚊」を原作に、脚本・監督を担当し映画化した作品。
セックスレスを解消しようと必死に迫り続ける年収50万の売れない脚本家の夫、毒舌で酒好きの家計を支える鬼嫁が繰り広げる愛憎渦巻く、結婚10年目倦怠期真っ只中の夫婦の物語。呆れて、笑えて、泣ける、最高の夫婦映画を生み出した足立監督に、夫婦のお話をたっぷりと伺いました!
—— 原作は自伝的小説ですが「ここまで見せちゃっていいの?」というくらい赤裸々でハラハラしました。
足立監督
小説を書いているときから、妻に読んでもらっていたので、ほとんど一緒になって作ったようなものなんです。書いているときはあまり気にしていなかったのですが、世に出した後、周囲からの反響が思いのほかたくさんあって。「あんなことまで書いて大丈夫?」と心配の声がバンバン届いたときに初めて「ちょっと恥ずかしいかも」って思ったくらいです。さらけ出しているつもりもなく書いていましたね。
—— 小説のテーマに夫婦を選んだきっかけはあったのでしょうか?
足立監督
「小説を書いてみませんか?」というお話をいただいたときに、夫婦をテーマにしたプロットがあったので、それを見せたら「これでいきましょう!」みたいな流れで書くことになりました。こんな話をおもしろがってくれる人はいるのかなという不安はありましたが、さらけ出すことに躊躇はそんなになかったですね。 実体験であってもなくても、シナリオを書くときにはある程度さらけ出さないと書けません。今回はたまたま実体験を書いたというだけの認識で、周囲の反応が来てから「あれ、変なことしちゃったかな」って慌てた感じではあります。
—— 小説を書いているときに、奥様からダメ出しなどはなかったのでしょうか?
足立監督
言葉遣いを可愛く直してと頼まれたときにはしっかり断りました。姑息な直しのリクエストは割とありましたよ。本当にせこい部分なのですが、例えば「あと30キロ痩せたら藤原紀香みたいになれるのに」というくだりを「15キロにして!」みたいなね(笑)
—— ほぼ実録とありますが、どのあたりは脚色が入っている部分なのでしょうか?
足立監督
「うどん少女」の話は脚色です。でもそれ以外、夫婦のやりとりみたいなところはほとんど本当の話です。
—— 奥様の言葉遣いもあんな感じですか?
足立監督
はい。むしろ、実際の妻に比べたらむしろソフトにしているくらいです(笑)。
—— 最初は「奥さん、厳しすぎる」って思いましたが、旦那さんを知ったら「言われて当然だな」と思ってしまいました。そんな気持ちを行ったり来たりしながら楽しみました。
足立監督
妻役の水川(あさみ)さんも最初は「ここまできつくはないでしょう」って思っていたみたいで。試しにちょうど僕に届いたLINEの画面を見せたところ、「全然盛った話じゃないんだ!」って驚かれました。LINEの一部でわかるほど罵詈雑言がひどいんです。
—— それは付き合った頃からですか? 映画にも付き合いはじめの初々しいシーンは登場していましたが。
足立監督
そうですね。今でもかわいくなるときはありますよ。でも不機嫌スイッチが入っちゃうと、次から次にひどい言葉が出てくるんです。
—— 言われるほうはつらいかもしれませんが、聞いている分には本当におもしろかったです。
足立監督
僕は彼女の罵詈雑言はひとつの芸だと思っています。なので、映画で水川さんが夫役の濱田岳さんを罵倒しまくっているところは、この映画の大きな見せ場のひとつだと思っています。