新型コロナウイルスの影響により激動の一年となった今年、社会全体で最もフォーカスされているキーワードといえば「サスティナブル(=持続可能な)」。化粧品業界でも、パッケージや使う原料を環境に負荷をかけないものに変えるなど、社会的に持続可能な取り組みを行うムーブメントが起きています。
オーガニックコスメだけでなく、化粧品業界全体が「サスティナブル」な方向へ舵を切っており、今後、製品を選ぶ上でも重要なポイントになるでしょう。
そんな背景を踏まえ、今注目の「サスティナブル・ブランド」とその取り組みについてご紹介します。
発売以来55万本を売り上げた“ナチュラルシャンプー”の先駆者
自然派だったお母さまの方針もあって、幼い頃から自然食で育ち、身の回りのケアでも石鹸のシャンプーを使っていたという、創始者の笹川直子さん。
「ナチュラルなものは肌にも髪にも確かによいのですが、石鹸シャンプーは“きしみ”やごわつきなど、使い心地にやや難がありました。そこで、髪に優しく使い心地のいいシャンプーをずっと探し続けていたんです」
あるシャンプーとの出会いが商品開発のきっかけに
なかなか満足できるものが見つけられずにいたある時、アミノ酸の洗浄成分でつくられたシャンプーと偶然出会い、その優しさ、使い心地のよさに感動!「家族みんなが安心して使えるシャンプーを自分でつくりたい」という想いに至り、開発をスタートさせたのだとか。
「製造において一番苦労したのが、優しさと効果のバランスを図ること」と話す笹川さん。優しいだけではダメ、使い心地や洗い上がりの良さを実感できるものでないと…とこだわり続け、試行錯誤の末に完成したのが「uruotte(うるおって)」です。
今でこそ、ナチュラルなシャンプーは市場に多数出回っていますが、「uruotte」が誕生した2005年にはまだまだ稀有な存在でした。その使い心地のよさ、髪と地肌への優しさが少しずつ口コミで評判となり、2008年には東急ハンズの自然派シャンプー部門において売り上げ1位を獲得します。
元来、植物由来のアミノ酸シャンプーは傷みやすいという弱点があり、なかなか大容量の詰め替えリフィルを商品化できませんでした。しかし、ブランド誕生時点からプラ削減を念頭においていたため、コスト度外視でエコボトルの詰め替えリフィルの採用を決定。当時からエコを意識した画期的な製品設計に、注目が集まっていました。
その後も頭皮エッセンスやヘアミルクなど、次々と新しい製品を手がけ、ナチュラル市場の先駆け的存在として有名に。そしてついにシャンプーの売り上げ55万本を達成したのです。
健やかな頭皮を育む優しさと効果感を両立したプロダクト
「uruotte」のシャンプーの特徴はなんといっても、顔が洗えるほどに低刺激で、敏感な人や肌の弱い人でも安心して使える処方設計です。ヤシ油由来のアミノ酸系洗浄成分と、潤いを与えるオーガニックのホホバオイルをベースに、センブリ、カンゾウ、オタネニンジン、セージなど、髪の土台となる健やかな頭皮を育む、18種類の植物エキスを配合。頭皮の毛穴の汚れを優しく取り去り、皮脂バランスを整えてくれます。
開発者の笹川さんは、髪と地肌への優しさを持ちながらも、使い心地についても重視していたので、自然派でも泡立ちとしっとり感のバランスをベストな状態にするまで、妥協せずに試作を繰り返したといいます。
クリーミーな泡立ちと豊かな香りが広がり、これ一本で洗髪が完結し、コンディショナーいらずなのも嬉しいポイントです。
コンディショナーはあえて作らず、シャンプーだけの商品設定。シャンプーだけというと抵抗がある人もいるかもしれませんが、1度使うと、その泡立ちの豊かさ、洗い上がりのしっとり感、翌朝のふんわりやわらかな仕上がりに感動するはずです。
誕生当時からサスティナブル目線でプロダクトを開発してきた笹川さんは、耕作放棄地で育った茶の実のオイルを使うなど、地域経済を豊かにする取り組みにも貢献。また、近年の自然災害の増加に配慮し、東日本大地震以降は被災地支援の活動に売り上げの一部も寄付するなど、社会貢献にも努めています。
頭皮や髪を美しくするだけでなく、地球も美しく。そんな願いが強く伝わってきます。
文/久保直子