家事に子育てに仕事に、毎日働くお母さんをしている。そうすると、いっぱいいっぱいになってしまって全部ちゃんとこなせず、「ああ、私ってダメだぁ…」と思う瞬間が、あります。でも、大丈夫。それは、あなただけではありません。どんなお母さんも、同じです。

 

今回取材したフォロワー約20万人という人気インスタグラマー・橋本彩さんも、自称「ぽんこつ主婦」を名乗る、そんな「働くお母さん」の一人。「ぽんこつ」というフレーズは、旦那さまに(愛情を込めて)言われたことがきっかけだったそう。それでも「料理だけは好き」という自分の好きを生かして、輝いています。

 

そんな橋本彩さんの主婦業のお話をお伺いしつつ、「すぐに作れる」簡単レシピと、そのポイントについても聞きました。

自分を責めなくてもいい
「ぽんこつ」でも、自分の好きを一つ伸ばした結果…

── そもそも「ぽんこつ主婦」という名前はどこから?

 

私は、家事全般がとにかくニガテ。結婚して少ししてから、仕事をやめて無職の時期があったですが、私の姿を見て夫に「ぽんこつ主婦」と呼ばれて…。もちろん、愛のある“いじり”として(笑)

 

── いじるとはいえ、否定的な感情は生まれなかったんですか?

 

そうですね、自覚があったし。夫にそう呼ばれても仕方ないくらい…。基本“ぐうたら”な人間なんです、私。たとえば、化粧水のフタとか、しめなくても気にならなくて、ずっと開けっ放しにしてしまったり。引き出しも開けっ放しにしてしまったり。パジャマを裏返しにきてても、「パジャマだしいいじゃん」と思うし、「どこも出かけない日は、顔も洗わなくてもいいじゃん、誰にも会わないんだから」…など。ズボラというか、おおらかなんですかね(笑)。家事も、ほんとうに苦手で。

 

── そんな橋本さんが「ぽんこつ主婦」として、活動するようになったのはどういったきっかけだったんですか?

 

「料理が好きなんだから、インスタで発信してみたらいいんじゃない?」と夫から言われたんです。家事は苦手なのですが、料理は大好きで、それだけは夫が認めてくれていました。料理は、頑張ったぶん、それが結果がとして見えやすいですし。実際、家事が苦手な主婦のかたって多いと思うんですよ。だから、「ぽんこつ主婦」と呼ばれても、料理はやれるぞ!ということを、みなさまと共有したかったというのもありますね。発信するからには自己満足じゃダメなので、人の役に立つ情報を発信するように、心がけてきました。

 

── でも、今やインスタのフォロワーが20万人ですよ!なんでそんなにフォロワーさんが増えたと思います?

 

珍しい食材や美味しい調味料を使って美味しい料理を生み出すのは当たり前のことなので…。そういったものではなく、身近な食材や調味料を使って新しい味付けを考えたり、切り方や盛り付けでいつもの料理の見栄えを変えたりして、それを丁寧に発信するようにしました。

 

フォロワーさんたちがわたしのレシピを見て作った料理をタグ付けして投稿してくださったから、さらにフォロワーさんが増えたのかもしれません。

 

切り方を少し変えるだけで、味ってガラリと変わるんです。たとえば、ズッキーニをスライサーでせん切りにしてみるとか。あとは、ちょっとした下ごしらえでも、私が普段家でやってみて、こうやってやるとラク!というのを、丁寧に書いたり。こんなことみんな知ってるから…と思ったら何も発信できないので、細かくても、一つひとつのことをしっかりと、1投稿に盛り込んで発信するようにしています。 あとは「100均のピーラーだけど、これ、めっちゃいい!」とかそういったことを発信したりも。それで、投稿を保存してくれる人も増えましたね。

 

インスタで見ていくら美味しそうな料理の写真でも、作ってみて実際に美味しくなかったら、意味がない。ホントに美味しくて、かつ実際に自分で簡単に作れるもの。それを発信することを、心がけています。

 

── 話を伺っていると、なんだか不思議と前向きな気持ちになれますね。読んでいる人に何かメッセージはありますか?

 

インスタの投稿を見ていただいて、普段のごはんづくりの参考にしていただいて、少しでも力になれたら…と思っています。そのときは、「私が考えたんだよ!」って旦那さんに伝えてください(笑)。普通の料理に少し変化をつけているものも多いので、「おもしろいね、この味付け」なんて、食卓の話題にもしてもらえるとうれしいです。

 

私の場合は料理ですが、みなさんにだってあると思うんです、「これだけは好き!」ということが。それは、家事に限らず、なんでも。そこを伸ばして、楽しくお母さんをしていけばいいんじゃないかな、って思うんですよね。


橋本彩さん直伝レシピ<夫が絶対に喜ぶ!簡単メイン>

①豚こまの甘辛揚げ丼

【材料(2人分)】

豚こま切れ肉……250g
酒……大さじ1
塩……少々
片栗粉……大さじ3

A|焼き肉のたれ……大さじ3杯
A|ブラックペッパー……たっぷり

サラダ油……大さじ2

B|温泉卵……2個
B|白菜キムチ……適量
B|白いりごま……適量

温かいご飯…2膳分

 

【作り方】

①豚肉はパックごとフライパンに移します。パックごと、どーんと!

 

②酒と塩を揉み込んで(※時間がない時は、下味を省いてもOK)、片栗粉を表面にまんべんなくまぶします。フライパンの上でやっちゃうから、洗い物も少なくて済む!

 

③豚肉にまんべんなく片栗粉を、揉み込みます。この作業も、フライパンの上で。

 

④肉に油がまわりやすいように広げてから…

 

サラダ油を、直接まわしかけます。油を先に引かないのは、フライパンの上で、片栗粉を混ぜたいから(笑)。

 

⑤フタをして強めの中火でこんがりカリッとするまで、4分加熱します。私は普段は、この4分の間に、ほかのメニューをササッと作っちゃいます。

 

⑥フタを開けて豚肉の上下を返し、キッチンペーパーで余分な油を吸い取ります。この拭き取るのが大切!カリカリになります。

 

⑦合わせたを加えて絡めます。

 

⑧照りが出たら火からおろしてごはんの上に盛り付けます。

 

Bをトッピングしたら完成です。

 

「丼物は見栄えがよく、お腹が空いたメンズの心をガッツリ掴めるんです(笑)」と橋本さん。野菜を変えたり、調味料を変えたりして、少しずつアレンジすることも簡単なメニューです。

橋本彩さん直伝レシピ<パパッと作れるサブメニュー>

②夏野菜ともずくのスープ(右)

【材料(2人分)

ミニトマト、オクラ、ズッキーニなどの夏野菜……適量
味付きもずく……1パック
白だし(ヤマキ割烹白だし)……大さじ4
ごま油……小さじ1

 

【作り方】

①鍋に水500cc(分量外)と白だしを加えて煮立たせ、食べやすく切った夏野菜を煮ます。

②野菜が煮えたらもずくを加え、再び煮立ったらこま油を加えて完成です。

 

<ポイント>オクラは、買ってきた網ごと塩ずり!これが、下ごしらえのワザです。早く煮える夏野菜を選んでいるので、小さな子どもも食べやすいですよ。大人は白こしょうやラー油を加えて、味変しても。

 

③蒸しキャベツとツナの酢じょうゆナムル(左)

【材料(2人分)】

キャベツ……1/8個(芯を除いて正味200g)
にんじん……5cm(40g)
ツナ缶……1缶
塩……小さじ1/2

A|白いりごま…小さじ1
A|しょうゆ・酢・ごま油……各小さじ1

 

【作り方】

①にんじんはせん切りにして耐熱ボウルに入れます。キャベツは細切りにしてにんじんにかぶせるようにボウルに加えます。

②塩をふりかけてラップをかけ、電子レンジ(600W)で3分加熱します。加熱後すぐにザッと全体を混ぜ、そのままあら熱をとります。

③キッチンペーパーやふきんで2回に分けて水けをギュッと絞り、ボウルに戻し入れます。油を切ったツナ缶とAを加えてよくあえたら完成です。

 

<ポイント>メインを作っている合間に作れてしまうサブレシピ!少し多めの塩をかけて蒸すことで、野菜から水分が出ても味がぼやけず、野菜の甘みも引き立ちます。作りたてはもちろん、冷えてもなじむとおいしいので、作り置きにもおすすめです。

できあがり!
さあ、家族で「いただきます」

── 晩御飯のメニューって、どのように決めていますか? 

 

夫が、お酒を飲む日と飲まない日があるので、飲まない日は丼物は、飲む日はご飯ナシでメインといくつかツマミを用意して、一緒に飲みます。1週間ずっとは…、頑張ってないです(笑)。水曜日とか疲れるし(笑)。子どもと近くのうどんやさんに食べに行ったりもよくしています。

 

── 橋本さんのレシピのポイントは? 

 

簡単にできるもの。ズボラなワザがちりばめられていること(笑)。レシピって簡略化するほうが、実は難しかったりもします。一言でレンジで加熱すると書いてあったって、実際にやってみたら失敗した経験、みなさん、ないですか?だから私は、みなさんの代わりに失敗します(笑)。何回も失敗した上で、失敗しないようなズボラワザを生み出して、発信していければいいなあと思っています!

 

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PROFILE 料理家/主婦・橋本彩さん

結婚を機に、夫が喜ぶ家庭料理を研究。ライフスタイルメディアにて料理家として勤務したのち、独立。料理初心者でも誰かに作ってあげたくなる、簡単ボリューミーな家庭料理を得意とする。Instagram @ponkotsu_0141 では夫婦のふだんの食事を発信。また@all.in.one.gohanでは「小さいおじさん」のオールインワン離乳食メニュー記録を発信。

取材・文/松崎愛香 撮影/田尻陽子