“育てられない母”と“実子を持てなかった夫婦”を繋ぐ「特別養子縁組」をテーマに、それぞれからの視点をつぶさに描きだした映画『朝が来る』(10月23日公開予定)。

 

この作品で、“持てなかった”ことへの葛藤を共有しながら、お互いを思いやり、慈しみ合う夫婦・佐都子と清和を演じた永作博美さんと井浦新さん。

 

実生活でもそれぞれ2児の親であるおふたりに、この作品で演じたからこそ感じた「特別養子縁組」のことや、プライベートでの子育てについてお聞きしました。 

 

「特別養子縁組」の現状をどう感じている?

——日本の「特別養子縁組」は世界的に見れば後進国だといいますが、おふたりは以前からこの制度についてはご存じでしたか?また実際に演じられてどう感じましたか?

 

井浦さん:

僕はこの作品と出会うまで、「特別養子縁組」の実態や、そこでどんなことが起きて、それぞれにどんな苦しみがあるのかも、まったく知らなかったんです。

 

役をやるにあたって、河瀨監督の「役を積む」という段階の中で学びながら、かつ実際に演じながら初めて知って、心が動いていきました。そもそも、自分がまず「特別養子縁組」の実態を知らなさすぎたことにショックを受けました。

 

永作さん:

私はずいぶん前に「特別養子縁組」の実態を伝えるドキュメンタリー番組でナレーションを担当したので、よく知っていました。興味があったので、関連の本を読んだこともあって。子どもを育てられない女性たちが出産するまで一緒にいる場所や、産まれた子どもを新幹線で養親の家まで連れて行き、玄関で渡す場面とか…番組でリアルに見ていたんです。

 

でも、日本ではこの作品で初めて知るという人もいるでしょうし、まだまだオープンではないですよね。かたや世界では、子どもやまわりの人への告知もすべてオープンに行われていて…そこに一番驚いたかな。

 

河瀨監督は、フランスで外国の方と一緒に最終的な編集作業をされたみたいなんですけど、そのときにも外国の方は「養子縁組の何が“おかしい”んだ?」って言っていたらしくて。

 

 

井浦さん:

「特別なことじゃない」ってね。

 

永作さん:

そう。「なぜ“特別なこと”にするんだ?」って。「若い子が道を踏み外して進む道を間違えるなんてよくあることじゃないか」と。改めて、その感覚の差を知れたのはよかったな。

 

——佐都子と清和の夫婦は、特別養子縁組で家族になった朝斗と日常を積み重ねながら愛情を育むことで“本当の親子”になっていきますよね。それについてはどんな思いがありますか?

 

永作さん:

今回、実際に特別養子縁組をしたみなさんとお会いして、あまりにもキラキラして幸せそうで。そんな本物の奇跡を知った人たちを目の当たりにして、やっぱり子どもが家に来ることって、陽が昇るのと同じくらい明るいことなんだなって思いましたね。

 

井浦さん:

もちろん大変なことはたくさんあるでしょうけど、特別養子縁組のご家族の方たちが僕らに伝えようとしたのは、「こんなにも幸せなんだ!」ってことだったんだろうなと。ご家族が、おじいちゃん、おばあちゃんたちも、みんなも幸せそうで。血が繋がってなくても、子どもがいて家族をつくっていくことに違いはないんだと、すごく強く感じさせられました。