耳の病気は目に見えない症状も多く、特に低年齢のお子さんでは自分の言葉で伝えられないため、大人が気づきにくいことがあります。
耳の病気でもっとも多いのは中耳炎ですが、他にはどのようなトラブルがあるのでしょうか。2児のママである耳鼻咽喉科医の三塚沙希先生にうかがいました。
PROFILE 三塚沙季先生
おうちで「耳掃除」はやらないで!
子どもの患者さんを連れたお母さんから、耳掃除に関する質問をうけることが多くあります。「何歳からやっていいですか」「どのくらいの頻度でやればいいですか」などありますが、おうちでの耳掃除はおすすめしていません。
というのも、耳掃除は基本的にする必要がないのです。本来、耳には「自浄作用」といって、自然に耳垢を排出する機能が備わっています。
食事や会話、あくびなどであごを動かすことによって、耳垢は少しずつ奥から外側へ行き、最終的には耳の入口へと移動してきます。そのため、お風呂上がりに耳の入口付近をタオルや綿棒などでやさしくふき取るだけで十分なのです。
逆に綿棒や耳かきを奥まで入れすぎると、逆に耳垢を押し込んでしまったり、強くかきすぎて外耳道(鼓膜よりも外側)や鼓膜を傷つけてしまう恐れもあります。
特に子ども自身には、綿棒や耳かきを絶対に触らせないようにしましょう。どうしても耳垢が気になるときは、耳鼻咽喉科で耳掃除をしてもらってください。
耳垢には個人差があるため、ベタベタと湿ったタイプの場合、耳の奥にたまってしまうことがあります。耳が臭ったり、聞こえが悪くなっている場合には、耳垢が外耳道をふさぐ「耳孔栓塞」になっている可能性も。
そんなときもムリに自分で取ろうとせず受診をしましょう。耳鼻咽喉科では点耳薬で耳垢をふやかしたり、ピンセットや吸引器といった専用の器具でしっかり取り除きます。耳掃除のみで訪れる方もたくさんいらっしゃいます。3か月〜半年に1回程度で受診していただくと安心です。
着替えや食事もイヤがる…「外耳炎」は痛みで生活に支障も
外耳炎も子どもに多い病気です。中耳炎は鼓膜の内側のトラブルですが、外耳炎は、耳の入口から鼓膜までの外耳道に細菌が感染して炎症を起こす病気。
原因の多くは、耳掃除のしすぎや爪でひっかいた傷からの感染です。耳が強く痛むのが特徴で、耳の入口に軽く触れたり食べ物を噛んだりするだけでも痛みが増します。そのため、着替えや食事をイヤがるなど生活への支障も出てきます。
37〜38度の発熱を起こすこともありますが、出ないケースも。耳を痛がるほか、耳をしきりに触る、耳がにおう、耳だれが出るといった様子があれば、早めに受診をしましょう。
治療は、消毒や抗菌薬入りの点耳薬の処方が一般的で、症状が進んで化膿した場合はウミを出すために切開処置を行うこともあります。初期ならば治療も簡単ですみますし、お子さんの痛みも早くラクにしてあげられるので、いち早く異変に気づいてあげることが大切です。
予防としては「耳掃除をしすぎない」、「爪をきちんと切る」、「耳に触れる寝具を清潔に保つ」ことを心がけましょう。