今回のコロナショックの影響で、自分の働き方について見つめ直す人が増えています。テレワークにも少しずつ慣れてきて、在宅で働くことや会社に縛られない働き方に興味を持つ女性もいるようです。
働き方の選択肢はもっとある。CHANTO WEBではそう考え、新しい働き方の提案の一つとして「ママがフリーランスで働くこと」を全4回の特集でお届けしています。
フリーランスの働き方や始め方について伺った第1回に続き、今回は子育てをしながらフリーランスとして働くメリットとデメリット、ママが独立するための具体的な方法などを紹介します。
引き続き、フリーランス協会・代表理事の平田麻莉さんに話を伺いました。
Profile 平田麻莉さん
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会・代表理事。大学卒業後、PR会社で国内外50社以上の広報業務に従事。修士号取得、専業主婦を経て、現在はフリーランスで広報や出版を行う。長男(6歳)と長女(4歳)の母。https://www.freelance-jp.org
フリーランスママは「自主休業に」?課題は出産・育休制度に
——平田さんご自身もずっとフリーランスとしてお仕事をされていますよね。サラリーマンとして働く人にとっては、リスクが大きい働き方と捉えられる面も多いのではないかと思うのですが。実体験も踏まえて、ママがフリーランスで働くことのメリットについてどう感じていますか?
平田さん:
一番は、時間の融通がきくことでしょうか。家族に合わせて休みや時間を調整できたり、急に子どもが熱を出したときにも対応しやすいなど、会社に属しているよりはストレスが少ないかなと思います。
あとは自分でどういう仕事を受けるのか、裁量を持って決められることですね。やらされ仕事がないというか、自分の時間を能動的に使える。誰かの役に立てると思える仕事を、自分で選択できることもメリットだと思います。
私自身、一つの枠組みにとらわれない働き方がしたくて、ずっとフリーランスを続けています。フリーランス協会の運営のほか、マネジメント業や出版プロデュース、ビジネススクールの教材作り、企業の広報アドバイザーなど、仕事はさまざまです。
働き方も子どもの出産や成長に合わせて変化していますね。1人目の出産後は週3日仕事、週4日専業主婦という働き方をしていました。
——臨機応変に働けるというのはいいことですね。とはいえ、デメリットもそれなりに覚悟しないといけないでしょうか。
平田さん:
フリーランスは安定的な仕事や収入が必ずあるという保証はなく、自己責任の世界です。急に仕事が減ってしまう、お客さんが来ない…そういったリスクは常にあると思います。
なかには、クライアントに対して立場が弱くなる人もいます。一部の業界では、口約束だけで契約書を結んでもらえないとか、当初の内容よりも多い業務を任されたのに報酬が変わらないとか…。ひどい話ですが、そういうこともゼロではないので。こうした問題をなくしていくため、フリーランスの契約ルール整備は、政府の成長戦略の柱の一つにもなっています。
あとは、出産や子育てなどのセーフティネットが会社員に比べて弱いことですね。例えば、2人目、3人目の子どもを欲しい…となったとき、フリーランスママだと産休・育休ではなく「自主休業」になってしまうんです。
会社員ママであれば、産休・育休を取得するときに「出産手当金」と「育児休業給付金」がもらえます。フリーランスママには経済的な保障制度がないので、子どもを産むことで収入が激減してしまう可能性はあります。
——育児休業給付金が出ないのは厳しいですよね。保活の面では、平田さんご自身はどのような経験をされましたか?勤務先からの証明がないと不利とか、会社員より大変というイメージがありますが。
平田さん:
確かにけっこう苦労しましたね。私の場合、2人目の出産後は早々に復職していましたが、待機児童になってしまい保育園に預けることができなくて。クライアントの了承を得たうえで、仕事先に抱っこひもで子どもを連れて行って仕事をしていました。
当時は保活のため役所に提出する書類は「内勤・自営業」と「外勤」の二種類だけで。フリーランスママだと一日中外で働いていても内勤扱いになってしまい、保育園入園が不利とされていました。
また、会社員ママには育休明けの復帰加点ポイントが付く自治体が多いのですが、フリーランスママは自主休業扱いで加点ポイントが付かないケースもあります。業務の実態を証明する書類を用意するのも大変でした。
ただ、2017年以降はフリーランス協会からも厚労省に働きかけをしていて、現在はフリーランスママが不利にならないような通知を、厚労省から各自治体に出してもらっています。
自治体判断なのでまだ完全ではないですが、「フリーランスは保育園に預けなくても子どもの面倒をみられるだろう」という偏見は、この2、3年でだいぶ変わってきていると思います。
私自身は出産と保活を経験して、「自分でこの働き方を選んでいるし、自己責任だから仕方ないか」と思っていたので、待機児童になったときも甘んじて受け入れていました。
でも、ここ数年でフリーランス人口は急速に増え、国も女性活躍推進を提唱するなかで、いまだに「フリーランスは自己責任で」という社会に疑問を感じるようになりました。同じ思いを抱える仲間と一緒に立ち上げたのが、このフリーランス協会なんです。
フリーランスとして働くためには、まず何をすればいい?
——メリット・デメリットを踏まえたうえで、フリーランスとして働きたいと思っても、最初の一歩を踏み出すのはなかなか勇気がいりそうです。何から始めればよいのでしょうか?
平田さん:
まずは自分のキャリアやスキルの棚卸しをすることから始めましょう。「自分は何ができる人なのか」と、考えてみてください。経験や実績もなく、いきなりフリーランスとして独立することはオススメしません。
副業が認められている会社にお勤めなら、会社員をしながら副業で始めてみるのがいいと思います。日中は会社に雇用されて、就業時間外の空いた時間にフリーランスとして働いている方は意外と多いですよ。
税優遇のない白色申告でも良いのであれば開業届を出さなくても働くことができるので、フリーランスとしての仕事って、実はすぐに始めることができるんです。
——副業からのスタートと考えると、少しハードルが下がりますね。フリーランスの仕事は、どのように見つけたらいいでしょう?
平田さん:
最近はいろんなマッチングサービス(クラウドソーシングやシェアリングエコノミー)があるので、登録してみるといいと思います。扱っている職種領域や手数料のビジネスモデルなど、マッチング会社によってけっこう違いがあります。
例えば、広報や経理、財務などのビジネス系なら、女性のための「Waris」「エッセンス」「サーキュレーション」など。WEBデザインやロゴデザイン、ライティングなどであれば「クラウドワークス」「JOB HUB」「BizGROWTH」などです。
何かを教えたいという人には、「ココナラ」「ストリートアカデミー」など、学びやスポットコンサルのマッチング会社もありますよ。ほかには、データ入力や翻訳などの業務を得意とする会社も。本当に幅広いので、まずは自分が得意なことや興味がある分野を検索してみましょう。
それらにプロフィールを登録する過程で、自分のキャリアやスキルの再確認もできます。ほかの人はどういう内容で登録しているか?相対的な市場価値は?どうアピールすればいいか?などの研究にもなりますし。
——一方でマッチング会社に掲載されている報酬額が低く、フリーランス1本でやっていく自信がないという声もあります。
平田さん:
そうですね。なかには報酬が低い案件もあるので、見極めも必要です。これはあくまでフリーランスの入り口と考えるといいと思います。経験を積むためのステージととらえ、まずは“ここを卒業すること”を目標にするんです。
大きな仕事はリスクも伴います。まずは小さなことから始めて、自分ひとりでプロジェクトを回すことや、クライアントとのやりとりや交渉を積み重ねるのがいいと思います。
実績や経験値が積み重なってくると、「こういうことを副業でやっています」「今後こんなことをやっていきたい」という想いを発信できるようになります。
友人や知人に伝えるのもいいですし、SNSで発信してもいい。そうすると、徐々に企業から直接仕事が依頼されるようになるケースが多いです。
——まずは自分にできることと興味の対象を見極めつつ、準備することが大事なのですね。次回は、実際に会社員からフリーランスに転職した中山綾子さんに体験談をお伺いします。
取材・文/大野麻里