セクシュアル・マイノリティという可能性

一方で、トランスジェンダーやXジェンダーなどの多様な性のあり方が広く知られるようになってきたからこそ、「ジェンダーレスな名前を」という一点をはっきり意識して命名する人も増えてきています。

 

米電気自動車大手テスラのCEOであるイーロン・マスクと交際中の歌手グライムスは、妊娠後期にあたる2020年2月のインタビューで、「お腹の子の性別は言いたくない」「将来に当人が自分はそのジェンダーではないと感じる場合もあるかもしれないから」と答えています。

 

男の子の身体で生まれても、「自分の性(性自認)」は女の子だと感じるかもしれない。

 

男と女、どちらの性にもしっくり来ないアイデンティティを持つかもしれない。

 

グライムスの発言は、そういった多様なセクシュアリティが存在しているという現実を踏まえてのもの。

 

自分の子はそういったセクシュアル・マイノリティになるなんて絶対にありえない。そう言い切ることはできますか? できるとしたら、それはあまりにも世界の現実について無関心だと言わざるを得ないでしょう。

 

ちなみに、5月に無事誕生したイーロン・マスク&グライムスのお子さんの名前は、本人たちのSNSによると「X Æ A-12」と命名したとのこと。「一体なんて読むの?」「記号じゃなくて本名?それともジョークなの?」と世間を騒がせています。

 

この名前が法的に認められるかは不明ですが、ここまで突き抜けるとジェンダー云々といった議論を吹き飛ばす次元です。

 

さておき、子どもの名付けには常に時代の空気が反映されるもの。もしかしたら100年後には、もっとユニークに、もっと多様化が進んだ、ジェンダーレスな名前が多数派になっているかもしれません。

 

文/阿部 花恵

参照/ミキハウス出産準備サイト「「ハナ」「ナオミ」はグローバルな名前?米国人研究者が分析する日本の名づけ」