今回は地下鉄、登山列車、路面電車にもなる不思議な路線、京阪京津線を紹介します。全国広しと言えども、これほどコロコロ性格が変わる路線も珍しいです。JR京都駅からもアクセスしやすい路線なので、この記事を参考にして訪れてみましょう。

そもそも京阪京津線とは

京阪京津線は京都府の御陵(みささぎ)と滋賀県のびわ湖浜大津を結ぶ全長7.5kmの路線です。御陵で京都市営地下鉄東西線に乗り入れ、びわ湖浜大津で石山坂本線(坂本比叡山口~石山寺)に接続します。京津線の電車は太秦天神川まで乗り入れますが、京都市営地下鉄の電車は京津線には乗り入れません。

 

ところで、「京阪山科」と地下鉄「山科」は別の駅です。地下鉄「山科」までの切符で「京阪山科」で降りると、加算運賃が発生するのでご注意ください。

 

地下鉄東西線が開業した1997年(平成9年)まで京津線は京津三条(現三条京阪)まで乗り入れていました。御陵~京津三条間は道路の上を走り、京都の名物風景の一つとなっていました。

 

京津線はJR京都駅からもアクセスしやすい路線です。京都駅から地下鉄烏丸線に乗り、烏丸御池駅で東西線に乗り換えられます。

 

京津線の終着駅であるびわ湖浜大津駅は滋賀側の京阪のターミナルです。遊覧船「ミシガンクルーズ」が出航する大津港へは同駅から徒歩3分です。

4両編成の電車が道路を走る

 

京津線のハイライトはびわ湖浜大津~上栄町間です。この区間では4両編成の電車が道路を走ります。京津線に使われる800系は一般車両よりも短い16m級ですが、それでも道路を走る姿は迫力満点。このような姿が見られる路線は全国でもここだけです。実は日本の法律では道路を走れる列車の長さは30mまで。800系は466mですが、「特例」で道路の上を走ってもOKということになっています。

 

びわ湖浜大津駅を発車すると交差点を急カーブします。上から見ると、まるで蛇のよう。急カーブしながら、ゆっくりと800系が目の前を走りました。

 

先頭車から見ると、窓が大きいせいか路面電車よりも迫力を感じます。スピードは自動車と比べてもスロー。信号が「赤」になると電車も止まります。何だか自動車に遠慮して走っているように思えます。車内にいた子どもたちも興味深そうに道路を走るシーンを見つめていました。子どもと京津線に乗車する際は必ず1番前の車両に乗りましょう。

 

ところで、石山坂本線もびわ湖浜大津~三井寺間の一部区間でも道路の上を走ります。こちらは2両編成の電車が走るので、可愛らしいです。

上栄町からは急カーブが連続する登山電車

小さい子どもを連れている場合は上栄町~追分間は手をつないで前面展望を楽しむようにしましょう。なぜなら、この区間は急カーブと急勾配のオンパレード。路面電車から登山電車へ早変わりします。

 

上栄町駅を過ぎると、右に左に急カーブの連続です。よく見ると、霧吹きのように線路が濡れていることがわかります。線路を濡らす理由は列車が曲がる際に発生する「キーキー」という音を減らすため。水を線路に撒くことで、車輪と線路の間に水の膜ができ摩擦を軽減できます。

 

写真だとわかりにくいですが、急勾配を登ったり降りたりします。最も傾斜のある勾配は61パーミル(1kmで高低差61m)です。この数値は大井川鉄道井川線の90パーミル、箱根登山鉄道の80パーミルに次いで国内3位です。1997年に廃止になった御陵~京津三条間には碓氷峠と同じ66.7パーミルの勾配がありました。一般の電車が通過できる勾配は35パーミル。そのため、特別仕様でない京都市営地下鉄の電車は京津線には乗り入れることができません。

御陵駅からは地下鉄路線そのもの

御陵駅の近くでトンネルに入り、同駅で京阪電気鉄道と京都市営地下鉄の運転士が交代します。御陵駅からは地下鉄路線そのもの。京都市内を東西に突っ走ります。

 

ところで、京都市営地下鉄の電車は6両編成ですが、京津線の電車は4両編成です。御陵~太秦天神川間で電車を待つ場合は乗車位置にご注意ください。

京津線に使われる800系も個性派

先述したとおり、京津線に使われる電車は800系です。京都市営地下鉄東西線への乗り入れ開始に合わせて1997年にデビューしました。旧塗装は水色、灰白色、黄色帯を組み合わせた凝ったデザインです。水色はびわ湖、黄色は京津線の路線カラーを表現しています。

 

2017年から他の京阪線でも採用されている緑色、白色、黄緑色帯の組み合わせに変更されています。大津線(京津線、石山坂本線)の全車両が新塗装に変わるのは2020年度となっています。旧塗装の撮影はお早めに。

 

車内は地下鉄路線を走る車両としては珍しく1+2列のクロスシートです。このように800系は車内も車外もオリジナリティーあふれる個性派の車両です。

京津線は本数にご注意

京津線に乗車する際は列車本数にご注意ください。土休日の日中でも1時間に3本しか来ません。石山坂本線は10分間隔だけに、京津線も「待たずに乗れる」と思いがち。時間にゆとりがない場合はあらかじめスケジューリングすることをおすすめします。

 

文・撮影/新田浩之