子どもが体調を崩し、母乳やミルク、食事をすぐに戻してしまう。あるいは、飲んだり食べたりしても、下痢であっという間に出てきてしまう…。「このままでは体力が落ちて、どんどん具合が悪くなるのでは?」と心配になりますよね。その判断のしかたと、正しいケアの方法について、小児科医の金子光延先生に教えていただきました。

 

 

 

<取材協力>金子光延先生(小児科医・医学博士)
1960年東京都生まれ。1986年産業医科大学医学部卒業後、同大学病院小児科勤務、横浜労災病院勤務、静岡赤十字病院小児科副部長を経て、2002年にかねこクリニックを開院。新米ママ、新米パパにもわかりやすい病気の説明、予防法のレクチャーに定評があり、多くのママ、パパから信頼を集める。著書に『よくわかる、こどもの医学』(集英社新書)、『こどもの感染症―予防のしかた・治しかた』(講談社)などがある。2020年1月に『保育園&小さな子どものいる家庭での食物アレルギー 事故を防ぐためコレだけは』(かもがわ出版)を上梓予定。

 

冬のウイルス性胃腸炎…特に危険なのは「ロタウイルス」

 

「子どもが下痢や嘔吐をする原因はさまざまですが、ほかの症状がなければ、ウイルス感染症をまず疑います。

〝おなかのかぜ〝なんていわれる、ウイルス性の胃腸炎ですね。

とくに知っておきたいのが、冬に流行る〝ロタウイルス〟、そして“ノロウイルス”にも注意が必要です。

下痢や嘔吐をくり返し、脱水症状で全身状態が悪くなることも、よくあります。

診断後は、脱水対策を確実におこなうことが肝心です」(金子先生)

 

ロタウイルスは、2歳以下の子どもに多く、とくに乳児で感染を起こしやすいウイルスです。吐瀉物や下痢便に含まれ、そこから接触感染を起こします。 症状は発熱、嘔吐から始まり、白っぽい下痢便が出るのが特徴。発熱や嘔吐は数日でよくなりますが、下痢が治るまでには12週間ほどかかります。 ロタウイルスには乳児期早期に受けられる有効なワクチンがあり、これで感染を防ぐことができます。ロタウイルスワクチンが普及してからは、ロタウイルス感染で苦しむ子どもがぐっと少なくなりました。

 

もうひとつ、ウイルス性胃腸炎の原因として知られるウイルスに、ノロウイルスがあります。カキなどの貝類のなかで繁殖し、食べた人の身体で感染症を起こすウイルスです。 健康な子どもでは重症化しないことが多いのですが、有効なワクチンも治療薬もなく、注意が必要。感染力が高いのが特徴で、下痢便などから広く感染します。 小さい子どもの場合、家族からの感染のほか、保育園や幼稚園でもらってくることもめずらしくありません。

 

嘔吐、下痢、発熱の症状が見られたら、これらのウイルスの可能性を疑い、小児科を受診しましょう。嘔吐、下痢、発熱などの症状に対しては、家庭での水分補給に努め、脱水症を防ぎます。

 

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