子どもが言うことを聞いてくれないとき、やむなく手をあげた経験はありませんか? しかし子どものためにおこなった行為だとしても、これからは“体罰”と認定されてしまうそうです。昨年、厚生労働省が発表した“しつけと体罰の線引き”について見ていきましょう。
子どもに対する暴力はすべて体罰扱い!?
“しつけ”と“体罰”の明確な違いを決めたキッカケは、2019年6月に子どもを守る法律「児童福祉法」が一部改正されたため。改正後に「親権者などによる体罰の禁止」が取り上げられたので、“体罰の定義”が新たに審議されました。
そして同年12月に発表された指針案には、“しつけと体罰の違い”について明記。「(子どもの)身体に何らかの苦痛または不快感を引き起こす行為である場合は、どんなに軽いものであっても体罰に該当」と記しています。
体罰に該当する事例も掲載しており、「しつけと体罰の関係」という項目を見ていくと「口で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた」「長時間正座をさせる」「友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った」「罰としてお尻を叩く」「夕ご飯を与えない」などの具体的なケースが。直接暴力を振るうのではなく、“食事を与えない”という行為も体罰にあたるそうです。
しかし罰を目的としない“子どもを保護するための行為”は体罰に該当しません。例えば「道に飛び出しそうな子どもの手をつかむ」「他の子どもに暴力を振るうのを制止する」などの行為は問題なし。ちなみに「児童福祉法」の改正法は、2020年4月から順次実施されます。
“言葉の暴力”もNG!
暴力以外には、「怒鳴りつける」「暴言」など“子どもの心を傷つける”行為も体罰として認められました。指針案によれば、「けなす」や「辱める」行動は子どもの権利を侵害するものだそう。また厚生労働省は子どもを傷つけることにより、“健やかな成長・発達に悪影響を与える”と考えています。
具体的な事例としては「冗談のつもりで『お前なんか生まれてこなければよかった』など、子どもの存在を否定するようなことを言う」「やる気を出させるために、きょうだいを引き合いにしてダメ出しや無視をする」などがあげられていました。
もちろん、子どもの前で配偶者に対して暴力を振るったり著しい暴言を吐くのもNG。新たに決まった改正法には、「体罰は良くないことだけど、子どものしつけがより難しくなりそう…」「明確に線引きしてくれたからわかりやすいね。だけど口で注意しても直らない子どもの場合はどうすればいいのだろうか」といった声が多数寄せられています。
体罰が発生した学校ってどのくらいあるの?
子どもの教育には学校の先生も直接関わりますが、実際に体罰と認められたケースはどのくらいあるのでしょうか? 東京都教育委員会は、都内公立学校を対象に昨年度発生した「体罰の実態把握」の調査結果を今年発表しています。
2158校の教職員や生徒たちに聞き取り調査を実施したところ、体罰をおこなった教師は「23人」という結果に。同調査を開始した平成24年度(182人)との比較では約8分の1に減少していますが、前年度(22人)と比較した場合はほぼ横ばいの状況でした。
続いて“体罰をおこなった理由”について質問すると、「態度が悪い(9人)」が最も多い回答に。他には「指示に従わない(7人)」「問題行動をとめるため(2人)」などもあげられています。
改正案の実施により禁止行為となる「体罰」。新たな取り組みによって、暴力に悩む子どもがさらに減っていくといいですね。
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文/内田裕子
参照/東京都教育委員会「平成30年度体罰の実態把握について」http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/press_release/2019/files/release190620_02/besshi_h30_gaiyo.pdf