ここ数年、注目を集めている「バレットジャーナル」というノート術を知っていますか?スケジュールやタスク、メモに自分の好きなことなど…なんでも1冊のノートに箇条書きで整理する方法です。個人個人の生活に合わせて好きなようにカスタマイズでき、仕事や家事、子どものことなどが一括で把握できるため、日々忙しい私たちのタスク管理に最適なノート術なんです。一時的に使うTo Doリストと違い、日々やってきたことがノートに蓄積されていくので自己肯定感や達成感を得られる嬉しいメリットも。
今回は働く2児のママであり、バレットジャーナル歴6年のMarieさんに活用術を教えていただきました。
バレットジャーナルとは?
「バレットジャーナル」とは、ニューヨーク在住のデジタルプロダクトデザイナーである、ライダー・キャロルさんが開発したノートによるスケジュール・タスク管理術です。
バレットジャーナルの「バレット」とは、箇条書きの先頭につける「・」のこと。こうした記号を使い、1日の予定やタスクで「素早く記録すること」を重視するのが大きな特徴です。タスクを達成したり、先送りにしたら記号を書き換え、やるべきことの状況がひと目でわかるようになっています。
1冊のノートに、スケジュールだけでなく仕事でやらなければならないこと、買いたいもののメモなどジャンルを絞らずに書き込めるので、膨大なマルチタスクを一括で管理することができます。
バレットジャーナルの魅力は?
タスクを管理するだけならば、手書きのリストやアプリでもいいのでは?と思いますよね。一見アナログな方法とも思えるバレットジャーナルの魅力はどこにあるのでしょうか?
まず、冒頭でも触れましたが、一時の使い捨てになってしまうTO DOリストと違い、やり終えたことが1冊のノートに残るのであとから見返したときに
「これだけのことをやった!」という自己肯定感を感じられる方法であることがあげられます。タスクを終えたら自分の手で完了の記号を書き入れていくため、「やり終えた!」という達成感を得やすくもあります。
そしてもう一つの魅力は、思考の整理がしやすいということです。やることが多くて頭の中がごちゃごちゃになってしまった!というときにも、なんでもノートに書き込めばスッキリとした気持ちに。
Marieさんは、 「あまりに忙しく、やることや考えることがありすぎると“手帳を開いて書くヒマもない”と思ってしまいますよね。でも、手の届くところにノートを開きっぱなしにしておいて、ほんの少しの時間を書き留めることに割くだけで、頭の中のワーキングメモリが解放されミスが減っていきます」
Marieさん自身も、子供の頃から忘れ物が多かったり整理整頓が苦手だったそう。特に、お子さんたちを保育園に預けて仕事復帰してからミスが多くなりました。保育園のお弁当を忘れたり、カレンダーに予定を書き込んでも覚えていなかったりとやり忘れが多くて散々な状況に…。
それを打開するためにMarieさんはなんでもノートに書くことを習慣にし、しばらくしてからバレットジャーナルと出会ったといいます。書きたいこと全てを書き込めるバレットジャーナルは、頭の中を整理するのにぴったりだったそうです。
「忘れっぽいのはそのままですが、こまめに書き留めるのでミスやトラブルが減りました。嬉しいことや達成したことなど小さなことでも書いておき見直す習慣のおかげで、自分への自信も育ってきたと思います」
仕事に家事、育児…とタスクが多過ぎて、保育園の準備グッズをよく入れ忘れたり、買い物するものをしょっちゅう忘れたり…そんなミスが多い人にぜひ試して欲しいノート術です。
バレットジャーナルに必要なものは?
バレットジャーナルに必要なのは1冊のノートと、ペンだけ。
既製のスケジュール帳だと1日やひと月など書く枠がすでに決められていて、書きたいことがあふれてしまったり、書くことがないという日もありますよね。しかしバレットジャーナルは、ノートを自由に使うため予定やタスクが多い日も少ない日もページを無駄なく使えるのがメリットです。
「私が6年もバレットジャーナルを使い続けているのも、市販の手帳のような決まったフレームがなく生活の変化にもフレキシブルに対応してくれるところに理由があるかもしれません」とMarieさん。
ノートはどんなサイズのものでもOKですが、持ち歩けるサイズのものだと、タスクを思いついたときに書き込めるので便利。MarieさんはA6のハードカバータイプのノートを使用しているそうです。
もうすでに新しいスケジュール帳を買ってしまったという人もいるかと思いますが、Marieさんは
「バレットジャーナルは“今、この瞬間に集中する”側面が強いので、長期のプランニングが難しいという性質も持っています。普通のスケジュール帳と組み合わせることで、その点を補うことができるので、空きスペースやサブノートを使って気負わず、気軽に始めてみるといいと思います」
と話してくれました。ぜひ、今回の記事でいいと思ったところを自分の手帳に取り入れてみてくださいね。
バレットジャーナルの基本となるページ
ノートを準備したら、最初にノート全体にページ数を振りましょう。
次に基本のページを作成します。 バレットジャーナルの基本の構成要素は、目次である「インデックス」、半年のスケジュールを管理する「フューチャーログ」、月々の予定やタスクを管理する「マンスリーログ」、毎日のタスクを管理する「デイリーログ」の4つに分かれます。
<インデックス>
目次のページです。ノートの最初のページから4pほどページを確保し、どのページにどの内容があるのかを書いておきます。ページを振ったり、目次を作ったりと面倒だと思うかもしれませんが、ページ数とインデックスがあることで「あの打ち合わせの時に思いついたアイデアはなんだっけ…?」などというときに、欲しい情報をすぐ探すことができます。
<フューチャーログ>
半年分の予定やタスクを管理するページです。インデックスページの次の2Pを6つに区切り、月の名前を書き、スケジュールやタスクを書き込みます。
<マンスリーログ>
1ヶ月のスケジュールを管理するページです。見開きにひと月の日付と曜日を書き込み、予定とタスクを書いていきます。日付を書くのが面倒だなと思う場合、数字や曜日が印刷されたマスキングテープが販売されているので、それを使ってみると手間が省けます。
<デイリーログ>
毎日の予定などを書き込む、メインとなる部分です。箇条書きで日々のスケジュールやタスクだけでなく、思いついたことや読書のメモなどを書き込んでいきます。詳しい使い方は記事の後半で紹介します。
そして、以上の基本の4つの要素とは別に「コレクション」と呼ばれる追加の要素もあります。
<コレクション>
やりたいことリストや旅行記、買い物リストなど、自分の好きなことや必要なことを組み込むページです。既存の手帳のメモページだとページ数が限られますが、バレットジャーナルだと必要だと思った時に、スペースを気にせずノートの好きなところに好きなだけ作ることができます。
以上がバレットジャーナルの構成要素です。SNSなどでは各ページを色ペンやシールなどで華やかにデコレーションしたものも多いですが、シンプルなものがまずは基本。自分が使いやすいスタイルで使っていきましょう。
デイリーログの使い方
毎日のスケジュールとタスクを管理する「デイリーログ」。どうやって使っていくのでしょうか?
デイリーログでは「キー」と呼ばれる記号を使って箇条書きすることが大きなルール。
やることの先頭には「・」、イベントの先頭には「○」という具合に使い分けます。
これらのキー以外に、自分の使いやすいようにアレンジしても。Marieさんは嬉しかったことにハートマークをつけたり、タスクの管理には「・」ではなく、見やすくタスクを消す時により満足感が高いチェックボックス方式を採用しています。家族の予定には、名前の頭文字をつけると誰に関するものかすぐわかっていいそうです。使いながら自分に合った使い方を見つけていきましょう。
毎日どういう風に使うかというと…。
まず日付をタイトルとして書き込みます。そして、その日やるべきことやイベントなどを記入していきます。書くタイミングとしては、前日の夜か当日の朝に行うといいでしょう。
そして、各タスクの完了や先送りに合わせて記号を更新していきます。また、メモやアイデアなど書く内容は限定せずに思いついたことをどんどん書き込んでいきます。1日で1ページと決めず、書くことが多い日はページをまたいでもオッケーです。書くことがない日は前の日と同じページに、続いて記入して構いません。
1日の終わりにその日行ったタスクをチェックし、やり残したことは次の日のログに持ち越して書く振り返りの作業を行います。
少し先の日付に先送りしたタスクは、マンスリーログやフューチャーログの方に記入し忘れないようにします。1ヶ月が終わったら、またマンスリーログを作成し前の月にやり残したタスクを引き継いで記入していきます。
Marieさんは、やり残したタスクを改めて書く作業が面倒なので、先延ばしになるタスクが減るメリットや1日のうちに実行できるタスクの量や時間を把握できるメリットを感じているそう。
またタスクの価値や時間の使い方について繰り返し考えることは、限られた時間の中で自分のやりたいことをするためにはどう行動すればいいか考える機会にもなります。
「コレクション」で自分だけのバレットジャーナルを作ろう!
「コレクション」には、やりたいことリストや読んだ本リスト、旅の旅行記など…自分の好きなものや必要なものを記録していきます。既存のスケジュール帳だとページが限られますが、バレットジャーナルだと必要なときに月の途中でも好きなタイミングで好きな分だけ組み込むことができます。
Marieさんのおすすめをいくつか教えていただきました。 「子どもが小さい頃だと、お出かけのもちものリストですね。海外旅行から、国内旅行、実家に帰るとき、ちょっと遠くの公園に行くとき、季節に合わせてリストができました」
子連れのおでかけには「入れ忘れた!」と焦る場合も多いもの。リストがあれば慌てずに準備できそうです。
さらに…
「無印良品に行ったら買いたいものリスト、百均に行ったら買いたいリストなど、お店ごとの買いたいものリストを作っておくのも便利です。たまたま寄ったときに”何か買うものあったんだけど思い出せない~”、家に帰って”そうだ!あれを買おうと思っていたのに!”というループから抜け出せます」
「ストレス解消法をリストアップしておく”コーピングリスト”もおすすめです。ストレスを感じたときにはこのリストから行動を選んで実際にやってみて、その効果を記録するというものです。書き出すだけでも癒しになっていました」
自分に効果的なストレス発散法を知っておけば、気分を切り替えるのに役だちますよね。
多くの人がさまざまなアイデアをSNSで公開しているので探してみると、参考になるものがたくさん見つかりますよ。
Marieさんにとってバレットジャーナルは、自身が積み重ねてきた経験や思い出を取っておくためのかけがえのないものだと言います。
「バレットジャーナルは、私の忘れっぽい脳みそを補完し、ぼんやりしていろんなことを見逃してしまいがちな自分の思考を支えてくれる大切な道具です。そして何より、あわただしい日々の中でうっかり通り過ぎてしまいそうになる、その瞬間にしかないかけがえのない出来事や感覚を、短い言葉で書き留め、大切にとっておくための私だけの場所でもあります」
仕事に育児に…忙しい日々を過ごしていると、ちょっとした思い出やアイデアなど「いいな」と思ってもすぐ忘れてしまうこともありますよね。
基本のログで日々の経験を、コレクションで自身の好きなことを残していけるバレットジャーナルはきっとあなただけの宝物になります。新しい1年をバレットジャーナルと共に過ごしてみてはいかがでしょうか?
PROFILE Marieさん
本業のかたわら、手帳術や語学学習についてのブログ「Mandarin Note」を運営。二児の母。著書に『「箇条書き手帳」でうまくいく はじめてのバレットジャーナル』(ディスカバー・トゥエンティーワン)『英語が身につくちいさなノート術』(KADOKAWA)がある。
取材・文/阿部祐子
参照/パレットジャーナル (海外サイト)