算数が苦手で社会人になって苦労した、という経験はありませんか。「かずとかたちに強い子なら、きっと社会に出ても困らない」、「わが子に数学的思考力を身につけさせたい」と思うママ、パパは多いのではないでしょうか。でも、それってどうすればいいの?算数教育に詳しい山口榮一さんに、家庭でできることを教えてもらいました!

 

かずとかたちに強い子は言葉を正確に使える子


「算数ができる子は、計算が得意なのではなく、言葉力がすぐれているのです」と山口さん。算数と言葉の力は対極にあるように思えますが、実は密接な関係があるのだそう。

 

「図形の定義や証明などには正確な言葉使いが求められます。算数を学ぶことで、物事をきちんと分析し、説明する言葉の力が育つのです」。AIの発達で将来が見えにくいなか、子どもに何を学ばせたらよいか親は悩みがち。どんな仕事につくとしても、相手にわかりやすく伝える〝言葉の力〟は必須といえそうです。

 

家庭学習のやり方には注意が必要だとも言います。「競争意識をあおるのではなく、理解を深め楽しく取り組むことを意識しましょう。いきなり問題集ばかりやらせてもおもしろくない。それよりも身近なところに学びの機会がたくさんあることに、親は気づいてほしいですね」

 

かずとかたちに強い子を育てるアイデア


「勉強しなさい!」というオーラを出すと、子どもはやる気を失い、親もつらくなりがち。算数の学習要素は生活のなかにもたくさんあるので、賢く利用しながら楽しく子どもの力を伸ばしていきましょう!

 

Conversation with children

親子の会話


数や量を意識しながら話すことで、生活に必要な時間や分量の感覚が育ち、子ども自身もわかりやすく説明ができるようになります。

 

idea01 「ちょっと待ってて」よりアナログ時計見せて伝える

子どもに呼ばれたきなどに「ちょっと待ってて」と言うのではなく、アナログ時計を見せて「長い針が5になったらね」など具体的に伝える。子どもの時間の感覚を育み、子どもも待つストレスが軽減される。

 

idea02 楽しみな予定カレンダーで確認数えることで、数の感覚を養う

「あと何回寝たら遠足?」などと聞かれたら、カレンダーで一緒に日数を数えてみることで、数の感覚が養える。カレンダーは月間タイプなど数字を意識しやすいものがおすすめ。

 

idea03 欲しい量を、「もっと」ではなく具体的な数で

食べ物や飲み物を「もっと」などと言われたときは、「あと何個?」「どのくらい?」などと聞いてみよう。そうすることで、「あと1個」「コップの半分くらい」など、わかりやすく説明できるようになる。

 

Help with housework

お手伝い


配る、分けるなどのお手伝いも、数や量を体感できる絶好のチャンス!サポートの手間を惜しまず積極的に手伝ってもらいましょう。

 

idea04 配膳は数の概念や大きい・小さいを学ぶチャンス

食事前に皿や箸などを配ってもらう。自分で考えてピックアップし、配ることで、かけ算やたし算、引き算の感覚が身につく。最初は間違ってもいいので、見守りながら考えさせることが大切。

 

idea05 くだもの配分を身につける

いちごなどのくだものや、お菓子を分けるときも学習のよい機会。子ども自身に数えてもらい、1人何個ずつ配ればよいか考えさせることで、割り算の考え方を身につけさせることができる。

 

Familiar things

身近なものを使って


身のまわりのおもちゃや道具も、遊び方しだいで、数や量、図形などの算数の感覚を身につけさせることができます。

 

idea06 折り紙でいろいろな形に触れ半分の感覚を養う

算数の学習は、公式や解き方を丸暗記するより、どうしてその答えになるのかを理解することが大切。折り紙を折ったり組み合わせたりすることで、計算や面積の問題も理解しやすくなる。

 

教えてくれたのは…

山口榮一さん

玉川大学名誉教授。SKIP算数教育研究会主宰。専門は教育方法、教材の開発、学習困難児の支援など。小学館のドラゼミ(現まなびwith)算数の監修。現在は、幼児と低学年児の算数教育の支援と指導に関わっている。

 

取材・文/野中真規子 イラスト/スヤマミヅホ 月刊誌『CHANTO』2019年10月号より