毎月、日本テレビの解説委員・岸田雪子さんによる「働くママが知っておきたいこと」をお届けしているこの連載。今月は、国際連合広報センターにお邪魔し、所長の根本かおるさんにお話をうかがいました。
戦後72年、日本では平和を感じられますが、世界では今も紛争が絶えることはなく、むしろ、ふえつづけています。紛争地域からは、難民として故郷を離れざるをえない人々が、後を絶ちません。今、私たちにできること、子どもたちに伝えたいことを、考えます。
Q世界では今、どんな戦争や紛争が起きているの?
A.イスラム国が活動地域を拡大。部族・民族紛争は世界各地で起きている
世界各地で紛争や武力衝突が起きている実態を地図にまとめたもの。紛争が起きれば、一般市民が巻きこまれ、犠牲となることも避けられません。
Q.どんな種類の紛争がふえている?
A.「国家」同士ではない紛争が急激にふえている
「国」と「国」の形をとらない「紛争」や「武力衝突」は、特に2010年以降ふえています。ちょうど「アラブの春」が広がったころ。反政府民主化運動後、動乱が収束せず、内戦状態に至っている国も多いのです。
Q.紛争が起きると「難民」もふえる?
A.難民・国内避難民の数はふえつづけ世界で6560万人以上も!(2016年末現在)
世界の難民の大半は子どもたち。難民の出身国はシリア、コロンビア、アフガニスタンが多く、この3か国で全体の半数以上を占めています。一方、難民の受け入れはトルコ、パキスタンが上位に。実はヨーロッパはベスト5に入っていません。
岸田 日本に住む私たちは平和を感じられますが、世界では戦争や紛争が、今も数多く起きています。根本 紛争学の権威であるスウェーデンのウプサラ大学がまとめたデータを見ると、2010年代に入ってから世界各地で紛争の数が急増しているのがわかります。冷戦崩壊の前は、戦争というと「国と国」の争いが中心だったのに対し、近年は非政府、非国家主体どうしの戦いがふえています。岸田 きっかけが、2010年ごろに中東や北アフリカで多く起こった、市民による民主化運動の“アラブの春”といわれています。根本 ここに周辺の国々が介入してきて、シリアのように、内戦から国際紛争に発展したケースもあります。また、それぞれの紛争が長期化する傾向も見られます。収束せず新たな紛争が起こり、数的には累計されていくわけです。この両方が、紛争の数がふえている要因になっているのでしょう。岸田 複雑な状況ですね。そして紛争が起きるとたくさんの人たちが家を失って難民となり、故郷を追われることになってしまいます。根本 そうですね。難民・国内避難民の数は、毎年「第二次世界大戦以降最多」、と数字が更新されています。岸田 トランプ大統領が誕生するなど、世界的に移民や難民の受け入れに否定的な傾向が強まっていることも心配です。実は、日本も、難民の受け入れをほとんどしていないのですよね。根本 たしかに、日本政府による難民認定は数が少ないのですが、民間では勇気づけられる動きもありますよ。NPOなどが、難民を日本に呼び寄せて「留学生」という形で日本語学校や大学で学問を学んでもらう取り組みが進んでいます。岸田 私たちも難民問題を人ごととしてではなく考えていきたいですね。そして、やはり紛争そのものを防ぐ取り組みが大切です。国連はどのような活動をしていますか。根本 国連の新しい事務総長は、「紛争の予防」が大切だと訴えています。紛争が起きるおそれのある地域に、国連の特使、場合によっては事務総長も直接交渉するのです。これまでアフガニスタンやシリアでも、国連が停戦や和解合意を取りつける交渉に乗り出してきました。岸田 紛争は一度起きてしまうと止めることが難しい。だからこそ、起きる前に予防する、平和的な話し合いが重要なのですね。あらためて、戦争を防ぐために必要なこととは何でしょう。根本 意見の違う人、見方の違う人を受け入れる寛容な心と、多様性をもつことが大切なのではないかと思います。岸田 小さな子どもたちは、純粋でやさしい心をもっているなと感じることがありますね。自分と異なる人を受け入れ、思いやる心を育てていくことが、平和を伝える第一歩かもしれませんね。
●お話を うかがったのは国連広報センター所長
根本かおるさんテレビ朝日を経て、1996年から2011年末まで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)にて、アジア、アフリカなどで難民支援活動に従事。ジュネーブ本部では政策立案、民間部門からの活動資金調達のコーディネートを担当。WFP国連世界食糧計画広報官、国連UNHCR協会事務局長も歴任。フリー・ジャーナリストを経て2013年8月より現職。
【プロフィール】日本テレビ解説委員
岸田雪子さん日本テレビ報道局で記者歴10年を経て、報道キャスターに。『スッキリ‼』、『情報ライブ ミヤネ屋』、BS日テレ『深層NEWS』などに出演し、現在は解説委員に。同じ会社に勤務する夫と、小4の長男の3人家族。仕事、家事、育児に加えて、実母の介護にも奮闘中。日本テレビのママサークル「ママモコモ」でも活動している。
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不要になった、子ども服を難民に届ける、という方法も
難民高等弁務官事務所)から要請のあった子ども服は約200万着。
目標の63%に到達していますが、まだまだ不足している厳しい状況です。子どもは特に成長が早く、多くの子ども服が必要とされています。
例えば、ユニクロ・ジーユーでは、不要になったユニクロ・ジーユーの子ども服を店頭に持っていくと、難民に子ども服が届けられるというプロジェクトを行っています。8月31日まで、子ども服の回収を強化しているので、ご自宅にある不要なユニクロ・ジーユーの子ども服は、捨てずに店頭へ持ち込みを。
HELP 子ども服が足りません。ユニクロリサイクル