『食堂かたつむり』『ツバキ文具店』の小川糸さんの最新作『ライオンのおやつ』が発売となりました。若くして余命を告げられた主人公の雫が、瀬戸内の島にあるホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色の中、本当にしたかったことについて考える物語です。
CHANTO WEBでは、現在、ドイツ・ベルリンと東京を行ったり来たりしながら生活している小川さんにインタビュー! 『ライオンのおやつ』で伝えたかったこと、小川さんのおやつの思い出や死生観について、そしてドイツでの暮らしについていろいろとお話を伺いました。
—— 「死ぬのがこわくなるような物語を書きたい。」という気持ちで書いた本とのことですが、小川さん自身は「死」をどのように捉えていますか?
小川さん
死には、自分が死ぬという死と、自分以外の人が死ぬという死の2種類があります。まずは自分の死については、それを経験したときに書くことができないのがすごく残念だなと思っています。
自分自身は死について「怖い」と感じたことはなく、逆に「何が起きるんだろう」と興味というか、ワクワクするという感じの方が強いんです。一方で、自分以外の死は想像するだけで恐ろしいし、喪失感や悲しみがあるので、捉え方はまったく変わってきますよね。
—— 小川さんが「死」を意識するときってどんなときですか?
小川さん
小さい頃は「死んだらどうなるんだろう」と単純に考えたりもしたけれど、やはり40歳を過ぎて、人生の折り返し地点を過ぎたときに、自分がいつ死んでもいいように、みたいなことは考えますね。
たとえば、もうそろそろ、遺言のような、自分がこうしてほしいという要望をまとめておこうかなとは思っています。自分にとっての優先順位って、そのときそのときで変わって来ます。だからこそ、その都度更新することが大切だと思っているし、第三者が見てもわかる形、伝わる形で残しておきたいと考えています。
—— 「ホスピス」を題材にするうえで、たくさんリサーチをしたかと思います。何か印象的だったことはありますか?
小川さん
ターミナルケアをしている医師の方に、作中の登場人物のように、実際に死が近い方たちのお話を伺いました。
ホスピスは死を受け入れて静かに淡々と、心穏やかに旅立って行く人たちの場所という印象があったのですが、実際は、死という自分の運命を受け入れられない人もいて、葛藤もあれば喜怒哀楽もあるということ。生々しい人間の感情があるんだということを知りました。でも、そんな環境の中でも「人は生きている限り、(考え方なども)変わることができる」ということを実際に目にしてきた人に伺えたことはとても大きかったです。