2015年、埼玉県所沢市で訴訟にまで発展した「育休退園」の制度ですが、数年経ったいまなお全国各地で大きな問題となっています。

 

今回は、「育休退園」とはどんな制度なのか、なぜ2人目の育休中に上の子が退園しないといけないのか、各自治体ではどんな制度になっているのか…など、育休退園制度についてのさまざまな疑問や課題について考えてみました。

 

「育休退園」とはどんな制度なのか


育休(育児休業)は、出産後8週間の産休に続いて、子どもが満1歳になるまで休業できる制度です。預け先が決まらないなどの事情があれば満2歳まで延長も可能です。

 

いま保育園にお子さんが通っている人が2人目や3人目を出産する場合、育休に入ればママはとうぜん在宅していることになります。

 

そこで、

 

「家にお母さんがいるなら、この子は保育園が必要な状態ではない。いったん退園して家で育てて下さい。そして他の待機児童のために枠を空けて下さい」

 

と通告される…それがいわゆる「育休退園」です。

 

所沢市では、2015年にこの制度を導入。

 

上の子が3歳未満なら退園という決まりが設けられましたが、すでに第2子妊娠中の家庭も多く、

 

「あと少しで3歳。知っていれば出産時期をもう少し遅らせたのに…」 「下の子の育休が終わっても、もし上の子がどこにも通えなければ職場復帰できない」 「上の子は本当にもとの園に戻れるの?」 「やっと保育園に慣れ、先生やお友だちとの生活を楽しみに通っているのに…」

 

と困惑の声が広がり、一時は訴訟にまで発展しました。

 

所沢市だけじゃない?!全国の自治体ではどうなっている


「保育園を考える親の会」が、2014年に全国の100自治体を対象に行った調査データでは、 86%の自治体で育休中でも年齢にかかわらず上の子の在園を認めています。

 

その一方で、所沢市など5つの自治体では、上の子が3歳未満(0~2歳児クラス)の場合は、は保護者が下の子の育休に入れば退園させるとしていました。

 

参考のため、筆者の住んでいる市の保育課へ問い合わせてみたところ、 「当市では上のお子さんに退園していただくことはありません。ただし短時間保育をお願いしています」 との回答でした。

 

しかし、近隣の市町村のホームページを確認してみると、いくつかの自治体で、「3歳未満の上の子は退園」「下の子の入園が決まらず育休延長したら、上の子も園には戻れない」…という規定になっているところが複数見られました。

 

また、所沢市をはじめ、育休退園制度のある自治体では、「上の子が元の園に戻れるよう最大限配慮する」となってはいますが、あくまで「配慮」であり、確約ではありません。

 

実際に、「きょうだいが同じ園に通えるのかどうかも直前まで分からず、持ち物や通勤の手配ができなかった」「できるだけ職場復帰したかったが、2人分の保活が難しすぎて退職してしまった」などの体験談もあります。

 

自治体ごとに待機児童の数や子育て支援・雇用の安定についての考え方が異なるため、制度も違うとのことですが、住むところによって子どもの人数やライフプランまでも変わってしまうのは考えものではないでしょうか。