ごはんをおいしく炊き上げる一番の方法は、「鉄釜」と「かまど」を使うこと。鉄鍋は熱の伝導率が高く、かまどを使うことで強い火力でムラなく炊き上げられます。とはいえ、一般的な家庭にかまどはありません。 最近では炊飯器メーカー各社がこの「かまど炊き」のごはんを目指し、内釜の素材にこだわったり、高火力を再現したりすることに注力しています。その反面、おいしいごはんが炊ける炊飯器は10万円クラスの高級家電なので、気軽に買い替えにくいのも事実。
もう少し手頃な価格でおいしいごはんが楽しみたい人に使ってみてほしいのが、釜浅商店の「釜浅のごはん釜」です。釜浅商店は浅草で100年以上料理道具を製造・販売するお店。そんな同店こだわりのごはん釜でさっそく白ごはんを炊いてみました。
南部鉄の釜&木曽サワラ製の釜蓋の本格ごはん釜
釜浅のごはん釜は、3合炊きのごはん釜です。南部鉄器の産地・岩手県盛岡と、釜蓋を作る長野県の生産者と共に、3年間の開発期間を経て誕生したそうです。
釜の内側は、900℃以上の高温で焼き付けてサビに強い膜を作る「釜焼き」が施されています。これは南部鉄瓶特有の製造技術です。鉄瓶のお湯は不純物が取り除かれて味がおいしくなるという特徴があり、その水で炊いたごはんもおいしくなるという考えから、この加工を採用しています。
フタは木曽サワラで作られており、吸湿性が高いので調理中に無駄な蒸気を吸収するそうです。また、ヒノキのように強い香りがないので、ごはんに香りが移りにくいのも特徴です。
ガスコンロだけでなくIHでも使える
このごはん釜がすごいのは、ガス火だけでなくIHでも使えること。きちんと現代の住宅環境を考えて作られたごはん釜なんです。
ごはんの炊き方もとくに難しくありません。お米を浸水させたらザルに上げて水気を切り、お米と同じ重さの水を入れます。1合あたり150ccです。あとは弱火で7分加熱し、沸騰するまで強火にします。沸騰後は弱火で10分加熱し、火を止めたら10分間蒸らしましょう。浸水時間を除けば、約30分でごはんが炊き上がります。
直火ならではのおこげもできる
炊き上がったごはんを食べてみると、筆者が愛用しているIH炊飯器は「甘み」を感じるのに対し、釜浅のごはん釜は「旨み」を感じます。普段食べているごはんも、炊き方を変えるだけでこんなに味が変わることに驚きを隠せません! 特売のお米ですらこれだけおいしいと思えるのなら、こだわりのお米を使えばさらにおいしくなりそうです。
ごはんの仕上がりは水の量や火加減、加熱時間などで左右されるので、正直、炊飯器よりも手間はかかります。とはいえ、直火ならではの「おこげ」ができるのも筆者が気に入った理由のひとつです。
今回、炊飯の手順は説明書どおりにしたので、少し火加減が強かったのかもしれない。
炊けたごはんはすばやくおひつなどに移し、釜は柔らかいたわしと水で洗います。また、濡れたままにすると錆びるので、火にかけて水分を蒸発させないといけません。こういったところは炊飯器よりも面倒なので、自分の生活スタルにどちらが合うのか検討してみてください。
釜浅のごはん釜は2万5000円(税抜)となっており、毎日使うことを考えれば購入の余地がある価格だと思います。炊飯器のごはんに満足していない人はもちろん、すでにホーロー鍋などでごはんを炊いている人も、ぜひかまど炊きに近いこの釜で炊いたごはんを味わってみてください。
釜浅商店 釜浅のごはん釜 3合炊き
サイズ:直径21cm(つば外形26cm)・高さ9.5cm 重さ:3.1kg
文/今西絢美 撮影/篠田麦也