プールが始まる季節になると、
その症状の名を聞くことが増える「中耳炎」。
一度かかってしまうと何回もかかってしまうとも聞くし、
一度もなったことがない子がいるとも聞くし…。
一体なぜなるの?感染性ではないの?
今回はそんな「中耳炎」の病気の特徴について、 小児科医の保田典子先生に 分かりやすく解説してもらいました。
どんな症状?
「中耳炎」とは、「急性中耳炎」と「滲出性中耳炎」の大きく2つ
中耳炎は、「急性中耳炎」と「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」の大きく2つに分かれます。ひとことで「中耳炎」というと急性中耳炎のことを指すことが多い傾向にあります。 急性中耳炎の主な症状は、耳が痛い・熱が出る・耳だれ(耳からの液体)がでる、というものです。子どもの様子としては、耳が聞こえにくくなったりすることも多いようですので、そういったことがあったら中耳炎を疑ってもいいかもしれません。また、耳が痛いことを「頭が痛い」という表現をする子どもも多いです。耳を引っ張ったりすると、さらに痛みを感じることがあります。 一方で、滲出性中耳炎については、発熱はありません。鼓膜の奥に水や膿がたまる状態で、主な症状として耳が聞こえにくくなります。子どもの場合は自分から症状を訴えることは少ないので気づけないことも多いため、三歳児健診や就学時健診で滲出性中耳炎が見つけられる場合も少なくありません。定期的に耳を診察してもらうことで、発見することができます。
何が原因なの?
ウイルス性のものと、細菌性のもの2つがある
中耳炎の原因は、風邪と同じでほとんどがウイルスや細菌です。細菌やウイルスが耳管を通り中耳腔(鼓膜の奥にある空間)に感染し、炎症が起きている状態です。
じつは、中耳炎はその子の耳の作りによって、発症しやすい子としにくい子がいます。もし一度でも中耳炎の診断を受けたことがある場合は、発熱時には必ず中耳炎のチェックをしてもらうことをオススメします。体が成長してくると、中耳炎を発症しやすい耳の構造も成長してきて、発症しにくくなってきます。 滲出性中耳炎は急性中耳炎の後になってしまうことが多いです。耳から喉につながる耳管が詰まってしまうことにより、起こります。
自宅での対策は?
「急性中耳炎」の場合
急性中耳炎は風邪に伴って発症するので、自宅でのケアも、風邪と同様と考えて大丈夫です。熱のあるときには、食事とお風呂は無理をしないことが一番。水分をしっかり摂取し、安静にすることが大切です。 感染を予防するにも、手洗いやうがいの徹底やマスクの着用を心がけるなど、風邪と同様です。風邪の感染者が家庭内にいる場合は、使うタオルを分けるなどに気をつけてください。
「滲出性中耳炎」の場合
滲出性中耳炎自体はうつる病気でありませんので、感染予防は不要です。ただし、急性中耳炎も滲出性中耳炎も耳から喉につながる耳管がつまるので、しっかり鼻水をかむか乳児の場合は吸引してあげることで、鼻の奥に鼻水をためこまないようにすることが大切です。以下の動画でも鼻水吸引のやり方を解説しています。参考にしてください。
いつ登園できる?
熱が下がれば登園はOK。プールは医師に要確認
急性中耳炎は風邪と同じと考えていいので、熱が下がって元気になってきたら登園可能です。ただし、例えばアデノウイルスのような感染症の風邪による中耳炎の場合は、感染症の登園基準に準じましょう。 登園自体はOKでも、プールに入っていいかどうかは受診した医師の許可をもらった方がいいでしょう。中耳炎と診断された際に、プールはどうしたらいいかについては、あらかじめ確認しておいたほうがいいでしょう。
保田先生よりひとこと
まだ未発達な耳の構造から、小さな子どもがなりやすい中耳炎。なりやすい耳の構造を持つ子は、風邪をひくたびに中耳炎になってしまうこともあります。とくに耳の痛みを訴えることがまだ難しい小さいうちは、発熱したら中耳炎のことを頭の片隅にいれておくことが大切。耳を触るなどの耳を気にする様子があったら、早めに耳鼻科医や小児科医に診てもらいましょう。 滲出性中耳炎は目に見える症状がほとんどないのですが、放置すると耳の聞こえに影響することがあります。急性中耳炎になったあとは、しっかり完治したか耳鼻科医や小児科医にチェックしてもらうことが大切です。
取材・文/松崎愛香 トップ画デザイン/山本めぐみ(el oso logos) イラスト/岡村優太