『おかあさんといっしょ』の11代目・たいそうのおにいさんとして、14年間もの長い間活動をされていた、小林よしひささん。番組の人気コーナー「ブンバ・ボーン!」で子どもたちと毎朝元気に踊るよしおにいさんは、子どもたちはもちろん、私たちママにとってもヒーローのようでした!
現在37歳を迎えたという、小林さん。23歳から14年間務め上げたたいそうのおにいさんを卒業するときの心境は?よしおにいさんも、私たちと同じように「転職」に悩んだりしたの?【前編】ではそのあたりについて、いろいろと話を伺いました。
よしおにいさん、等身大の37歳として「転職」を語る
体操のお兄さんになったその日から、いつかは訪れる「転機」について考え、準備をしていた
── 今春で体操のお兄さんをご卒業されましたよね。それも世間でいう「転職」ということになりますよね?
小林よしひささん:そうですね。「転職」ですよね、フフフ。たいそうのおにいさんも現在も、テレビでのお仕事であるという意味では変わらないのですが、ありがたいことに今は経験したことのないさまざまな仕事をいただくので、毎回が新しいチャレンジです。そういった意味では、全く別の仕事といってもよいかもしれませんね。
── 小林さんでも、新しいフィールドでとまどわれたりするんでしょうか
小林よしひささん:僕は、新しいことに挑戦できることほど楽しいことはないと思っていて。新しいことに取り組むのって、大変なことも多かったりしますが、「新しい環境を素直に楽しむ」ということが一番大事なのかな、と思いますね。
現場の雰囲気は、もちろん今までとは全然違います。例えば『ブンバ・ボーン!』では、子どもたち40人くらいと接していました。一人ずつ声をかける時間はないにしても、子どもたち全員の顔は必ず見るようにして、一緒の撮影時間を楽しむように心がけていました。今の現場は大人ばかりで最初はとまどいましたが(笑)、撮影時間を楽しく過ごすための努力をするという意味では、変わらないですね。
── 小林さんはもともと学生時代から「たいそうのおにいさん」を目指していらっしゃったのですか?
小林よしひささん:それが、全くなんです。だから、今こうしてこの場所にいることを、学生当時は想像もしていなかったですね。
僕は高校まで剣道をやっていたのですが、剣道をやる上で、より強くなる方法を自分で研究したりしていたんです。それで筋肉とかトレーニングの勉強をしたくて、そういったことの基本が体操ということもあり、日本体育大学の体操部に入部しました。 入部してみて、そこからたいそうのおにいさんが数人輩出されていることを初めて知りました。といっても、なれる可能性としてはゼロではないにしても限りなくゼロに近い感覚で過ごしていましたね、当時は。
大学卒業後は、地方公務員を目指していました。そんな頃に、たいそうのおにいさんのオーディションを受けてみないかと、大学の先生から勧められまして。これも勉強、と受けたのがきっかけです。
── そうなんですね…!実際は14年間という長い間在籍していらっしゃいましたが、「たいそうのおにいさんになる」と決めた瞬間から長く務め上げるプランというか目標があったのですか?
小林よしひささん:…というより、逆ですね。長くないだろうなあ、と勝手に思っていました。というのは、前任の「ひろみちおにいさん」がとても人気のある方だったので、次が僕となると「なかなか受け入れてもらえないのかな…」という不安がありました。そういった意味では、どこかで卒業後のことを、その当初から考えていたのかもしれません。
と同時に、当時は目の前にあることに努力し、楽しい番組にするということに精一杯でもありました。だからこそ、14年間やってこれたというのもあるのかもしれません。
── 長い間務め上げられて、辞めるきっかけはなんだったのでしょう
小林よしひささん:14年目を迎えて長くなったのでそろそろかなというのが自分でもありつつ、番組の改変に合わせて卒業の話をいただきました。
例え長くなったとしても、確実にいつかは卒業するたいそうのおにいさん。そういった意味では、オーディションに合格した段階から次のことは常に考えていたかもしれないですね。それに向けての勉強や経験を、ポジティブにするように心がけてきました。
娘が生まれてからの転職「だからこそ、頑張れる気がする」
── 小林さんは大きな決断はスパッとできるほうですか?とはいえ、小さな子どもを持ちつつ方向転換するとなると、迷うことも多かったのではないでしょうか。
小林よしひささん:決断するときはもちろん悩みますけど、決めるときはパッと決めますね。確かに、単身のときは、もっと決断が早かったかもしれません。今回の卒業は偶然というか、ちょうど娘が生まれた年の転職になったので、それはかなり、いままでの人生のなかでは行き先を悩んだほうですね。
ただ逆に決め手になったのが、「子どもや家庭を守らなくては」という思い。決めたら進まなければいけないんだ、とパッと決断ができました。小さな子どもがいるとか家庭があるとか、そういう部分のプレッシャーや悩みが決断を鈍らせることはあると思うんですけど、逆の発想で「だからこそ決断しなきゃ」と変わった瞬間がありましたね。
── 仕事においてやりたいことがある一方で、日々の子育てがある。読者も同じ悩みを抱えています。優先順位を決められない場合、どこかで線を引かなきゃいけない?
小林よしひささん:子どもがいると、バリバリ働くことはなかなか難しかったりしますよね…。私の場合は周りのサポートもあったので、そういった意味ではすごくありがたい環境ではありました。妻もいま育休中で、大きくなったら復帰する可能性が高いですね。そうするとまた環境が変わってくるし、違った大変さが出てくるでしょうね。
でも、周りやいろんな人の力を借りて、みんなで子育てをすることで仕事に向き合うことってできると思うんです。だからこそ、ちゃんと「自分がやりたい」と思えることをやってないと、頑張れないのでは、とも思います。例えばお金のためだけとかだったら、どこかで、押しつぶされてしまわないか。だからこそ、自分が本当に進みたい道なのかを考える必要があると思うんですね。
── やりたいことに、素直に向き合うということですね?
小林よしひささん:…と思います!僕がこういった職業だからでなく、どんな職業の方も。読者のみなさんも、「やりたいことに素直に向き合う」を指針として仕事に向き合えるほうが、頑張れるんじゃないでしょうか。
── 仕事をする上で「これだけは守りたい」「仕事の核としているもの」はなんですか?
小林よしひささん:どこかで「お仕事は我慢料」っていうのを聞いたことがあるのですが、それって実際違うのかなと思います。 これからの世の中は、自分らしさを発揮できる「人とは違う何か」が大切になっていく時代にもなっていくと思います。だからこそ、「自分が本当に好きでやっているか。自分を偽っていないか」ということは、仕事しながら常に自問自答しています。
これからも、さらに挑戦しつづけたい
── これから教育系の仕事に力を入れていくとブログで拝見しましたが、具体的にはどういったプランを考えられていますか?
小林よしひささん:たいそうのおにいさんを14年やってきた中で、なんとなく自分のなかで教えたいことや指導方法を見い出すようになっていました。これからは小さい子から高齢の方まで、体操を通じて教えられることを追求していきたいと思っています。ただ、番組で3〜4歳の子どもたちとたくさんコミュニケーションをとってきた経験があるので、そういった小さな子どもたちに体操を通じて教えられることがあるといいですよね。
具体的な活動としては、単発のイベントで親子体操をやったり、ゆくゆくは自分の体操教室を持ちたいという思いもあります。そのためにはまだまだ勉強不足なので、大学院などで勉強もしたいです!
── そうですよね、やっぱり小林さんといえば体操ですよね!「ブンバ・ボーン!」は私も子どもも大好きでした。ところであの動きは、ご自身で考えられていたのですか?
小林よしひささん:「ブンバ・ボーン!」体操では、すべてやると一通りの動きができるように考えられています。それに踊りや歌の要素を加えて、楽しく覚えやすくしています。私は実際に体操を伝える立場として、そして体操家として、動きを決めるときに携わらせていただいていました」
── 余談ですが…「ちょっとオカピ〜」の振り付けも、小林さんが考えられたのですか?
小林よしひささん:それは、 振り付けの先生です(笑)。番組で企画したことを伝えるのは私たちなので、どう面白く変換するかというのは、少し提案させてもらったりしましたね。他のコーナーですが、変顔なんかもそうです(笑)。
── 変顔といえば、「すりかえ仮面」も大好きでした!
小林よしひささん:ありがとうございます。彼は親友なので、伝えておきますね(笑)。
最後に…CHANTO世代がもし頭に転職がよぎったら、守りに入らず突き進むべきだと思いますか?
小林よしひささん:はい!私は、そう思いますね。頭によぎるということは「挑戦してみたい」ということ。その気持ちがあれば絶対頑張っていけると思うので、だったら早いほうがいいと思うんです。もちろん失敗する可能性もありますが…それは、恐れずに。その瞬間はきっと大変かもしれないけど、どっちにしろ人生は進んでいく。であれば、思いついたら進んでいったほうが、私はいいなと思います!
一つひとつの質問に、とてもやさしく答えてくださった小林さん。「小林よしひささん「新米パパ大奮闘!たいそうのおとうさん」」では、0歳5ヶ月のパパとしての顔にせまります!
PROFILE 小林よしひさ
NHK『おかあさんといっしょ』の11代目・たいそうのおにいさん。14年間の長い間務め上げ、2019年3月に卒業。同番組でスタジオの子どもたちと一緒に踊る「ぱわわぷ体操」や「ブンバ・ボーン!」は、世の子供たちのみならずママたちの元気の源になると話題に。また、大人気のキャラクター『すりかえかめん』とは、いまもなお親友とか。 現在は、各メディアでタレント活動や体操インスラクターとして活躍するかたわら、教育活動にも力を入れ始めている。
取材・文/松崎愛香 撮影/田尻陽子