駅や路上でつらそうな人を目撃したけど、どうしたらいいかわからない。そんな時、「助ける」意識でなく、とにかく声をかけることが大切と話すのは、お笑い芸人のツネさん。応急手当普及員の資格を取得し話題になったツネさんは、それが救命の一歩にもなると話します。
なぜ応急手当普及員の資格を?

── 「右ひじ左ひじ交互に見て」のリズムネタで人気を博したお笑いコンビ「2700(にせんななひゃく)」の元メンバー・ツネさん。2026年8月には公的資格である、応急手当普及員を取得したことをSNSで報告し、反響を呼びました。応急手当普及員とは「消防機関による応急手当技能普及を支援し、救命講習を教授する人員・資格」ですが、芸人のツネさんがなぜ取得を思い立ったのですか?
ツネさん:2025年にZUMBA(ズンバ)というダンスフィットネスのインストラクター資格を取得し、各地で様々な生徒さんにレッスンを行う機会が増えました。その際、生徒さんの安全や健康を守るため、人体を模した人形を用いて胸骨圧迫(心臓マッサージ)を練習したり、実際にAEDの電極パッドを貼って使い方が学べたりする普通救命講習を受けたのがきっかけです。
「ちょっとした知識と、ちょっとした勇気で人の命が助かる」と、救命講習を受けた経験をインスタグラムで発信すると、救急救命士の方から「救命講習の普及のためにコラボしませんか」と個人的にDMをもらいました。
その方は「現在の救命講習はピリピリとした硬い雰囲気で行われてるから、柔らかいイメージに変え、もっと多くの人に受け入れられやすくして、広げたい」という問題意識を持っていて。直接お会いして話をしたのですが、そのなかで救命講習を広げる応急手当普及員という資格があると教えてもらい、取得することにしたんです。
その後、連絡をくれた救命士の方々と一緒に、胸骨圧迫(心臓マッサージ)とAEDの使い方を広める動画を撮り、2026年8月、YouTubeやインスタグラムで発信しました。
胸骨圧迫は「アンパンマンのマーチ」リズムで
──「救命講習の硬い雰囲気を変えたい」という問題意識から始まりましたが、コラボ動画では、芸人として救命講習の内容をわかりやすく伝えるように工夫された点はありますか?
ツネさん:動画では胸骨圧迫をする際にどのくらいの速さが適しているかについて、2700時代のネタをとりいれてボケるなど、親しみやすい雰囲気を心がけました。たとえば、僕の「“右ひじ左ひじ”のリズムでやるとか?」というボケに、救急救命士が「“右ひじ左ひじ”のリズムでは速すぎます。1分間に110回が目安なので、“アンパンマンのマーチ”を心の中で歌いながら押してください」とツッコミながら教えてくれる、という感じです。
── 胸骨圧迫に関する救急救命士からの「ヒジは曲げずに」のアドバイスに対して、ツネさんが「ヒジを曲げたらダメなんですか?今までずっと曲げてきたんで(笑)」と返しているところも、クスッと笑えます。私も、何度か救命講習を受けたことがありますが、一度も笑うポイントはなく、気を張りすぎてどっと疲れました…。
ツネさん:それはよくわかります。でも、柔らかい雰囲気にするといっても人の命が関わるため、「崩しすぎるのもよくない」と、応急手当普及員として絶妙なラインを探っている最中です。現在、救命講習は消防署などで行われることが多いのですが、理想はショッピングモールなど気軽に立ち寄りやすい場所で、楽しい雰囲気で行えればと考えます。
── 救命講習を多くの人に広めたいということですが、一般の人が救命行為を行うニーズは高まっているのでしょうか?119番通報から救急車の現場到着までの時間は年々長くなる傾向にあると聞いています。
ツネさん:動画の中で、救急救命士の方が「救急車到着まで平均約10分。心停止の場合、その間、何もしなければほぼ助からない。胸骨圧迫をすれば心肺停止した人のうち20%が助かる。さらにAEDを使えば、その2、3倍助かる可能性がある」と話しています。この話が示すように、救急車が到着するまでにその場にいる人の初動対応や、AEDを使用することが大事なんです。