世界98か国を旅し、著書『ブラを捨て旅に出よう 貧乏乙女の“世界一周”旅行記』はドラマ化もされた歩りえこさんは、DV離婚を経て3人目の子どもを未婚で産む選択を決断します。「子育てが生き甲斐だった」と語る歩さんが、結婚という形にこだわらず、築いていく家族の姿とは。

第2子出産後に始まった夫のDV

歩りえこ
現在は3人の子どもと穏やかに暮らしている歩りえこさん

── 世界一周の旅行記をつづった著書『ブラを捨て旅に出よう』が大ヒットした歩さん。その後、台湾人男性と結婚し、現地で2児のお子さんをもうけるも約3年で離婚されました。原因は何だったのでしょうか。

 

歩さん:夫からのDVですね。33歳で結婚して長女を出産、2人目もその後すぐに妊娠したのですが、産後直後に何度も性生活を求められ、つわりがつらい時期もDVが続きました。昼夜を問わず育児に追われ寝ていないのに、夫の暴力にビクビクした生活を送らなければならない。安心して育児ができない、生活を続けるのは難しいと思っていたときに、夫のDVで母子共に病院に搬送されました。これまでにも何度か同じことがあったので病院がすぐ通報してくれて。退院後は家に戻らずシェルターに避難することになりました。

 

── 深刻な状況だったのですね。

 

歩さん:シェルターはスマホの電波も通じず、私と同じように、DVで顔や身体を殴られた跡がある女性が何人もいました。でも、家族など頼れる人がいなかったり生活力がないと結局、パートナーの元に戻っていってしまうんですよね。そんな現実を知って「こんな人生は嫌だ」と思ったんです。シェルターの運営者からの勧めもあり、帰国を決意。日本に戻って離婚裁判を起こし、半年後に離婚が成立しました。

 

── 帰国後の生活はいかがでしたか?

 

歩さん:2人の子育てと仕事に精一杯で、気持ちにまったく余裕がありませんでした。日に日に追い詰められていくなかで「このままでは厳しい。新しいパートナーと2人で協力しながら生きていけたら」と思うように。結婚相談所に足を運び、婚活パーティにも積極的に参加しました。

 

しかし、何人かの方とお付き合いをしましたが、「自分の子どもも欲しいので、ふたりのお子さんまで見るのは…」と言われると複雑な気持ちになりました。シングルマザーとして苦労したものの、私にとって子育ては、自分が生まれて来た意味とも思えるほど生き甲斐だったんです。そもそも昭和生まれで3人兄妹の私にとっては、母親と同じように3人は子どもを産むことが当たり前の感覚でした。20代で旅に行き尽くし、子どもを産み育てること以上に大事だと思える価値を他に見出すことが出来なかったし、今後もないと感じました。再婚したいのはもちろん、「どうしても、もう1人欲しい」という思いも募っていたんです。

 

再婚がなかなか決まらないなかで年齢を重ねながら、「産みたかったのに産めなかった」と後で後悔するのがとても怖くなりました。それなら「再婚してから子どもを産む」という順番にこだわらず、出産を優先しようと当時交際していた方との間に子どもを持つことを考えました。ただ、2回妊娠したのですが、いずれも流産に。

 

気づけば38歳になっていました。出産のリミットを考えて卵子凍結もしましたが、身体の負担や費用の負担も大きく、ある程度凍結できたところでストップしました。医師に相談すると、卵子を凍結できても年齢が上がるにつれ妊娠がしづらくなることや、リスクなどを説明してくださいました。だったらなおさら急がなければと焦りましたが、不妊治療や体外受精を希望する人は想像以上に多く、病院の予約が取りにくい。シングルだとなおさら難しい状況でした。

再婚より子どもを産むことが私の使命だと

── その状況で3人目に恵まれるには、かなり大変な道のりにも感じます。そこまでして3人目のお子さんが欲しいと思った理由はほかにもありましたか?

 

歩さん:あとは、私がそれまで世界各国を旅した経験が大きいですね。世界を周りながらたくさんの大家族宅に居候して来ましたが、どの国のママも「子どもを産み育てたことが人生で最も幸せな経験だった」と言うんです。

 

それに、旅に出るたびに日本のよさを実感してきましたが、一方で日本の出生率は減少し続けている。ちょっと壮大な話に聞こえるかもしれませんが、「私みたいに子どもが好きで、産める人が産まないと、日本は消滅してしまう」といった危機感も抱きました。私は推し活もブランドものもホストもゲームもいっさい興味ない。テレビすら持っていません。興味があるのは旅と育児だけ。こんなに産まない社会であれば、産める人が産めばいい。

 

たしかにシングルマザーで経済的にはゆとりのない状況でしたが、やりたいこともある程度若い頃に終えていたので、「これからの私の使命は子どもを産んで、育てることだ」と思いました。

 

──「選択的シングルマザー」の道を選ぼうと。

 

歩さん:はい。海外では結婚せず、パートナーとの間に子どもをつくる人や、夫と別れてシングルマザーとして子育てをする人たちがたくさんいます。フランスでは結婚に関係なく、出産することが多いのも衝撃でした。反面、日本では子どもを産むのは籍を入れてからが一般的。授かり婚は、以前ほど批判されづらくなりましたが、それでも「計画性がない」など、いまだにいろいろと言われます。

 

海外の家族の形をたくさん見てきた結果、私には結婚という形式に縛られず、恋愛も育児も自由に…みたいな感覚が合っているのかなと思ったんです。

 

また、婚活を続けるなかで「本当に私は誰かと一緒に暮らしたいのかな」という疑問を抱きました。離婚後は家族が欲しくて婚活をしていましたが、過去の結婚生活を振り返ると、相手がいることで気を使ってクタクタになることも多かった。それに父親がいるから幸せとは限らない。連れ子を虐待するリスクも考えられる。だったらシングルマザーがいいのかなと思ったんです。