いちばん消したかった過去を受け止めた夫と結婚し

松尾知枝
起業した婚活スクールの講義にて

── その後しばらくCAとして活躍した後、婚活コンサルタントに転身されました。

 

松尾さん:CA時代に周りからよく恋愛相談を受けることが多かったのですが、私が話を聞いて現状を分析し、アドバイスしたらうまくいくことが多かったんです。なかには結婚した人もいました。次第にみんなから合コンをお願いされるようになって、気づけば1000回以上の合コンを企画。その経験を通して人間観察をしてきたこともあって、婚活コンサルタントの会社を思いきって起業しました。

 

── 今の旦那さんとも合コンで出会ったのでしょうか?

 

松尾さん:彼とは合コンではなく異業種交流会で知り合いました。彼は児童養護施設で育った私の過去を自然に受け止め、「カッコいいじゃん。ガッツあるね」と言ってくれて。当時、いちばん消したかった私の過去でしたが、彼なら私の逆境を共有できる、何かあってもうまく乗り越えていけるだろうなと思い、交際から1年後、結婚に踏み切りました。

 

── 今年で結婚されて15年、家族の在り方など家族観は変わりましたか。

 

松尾さん:私が虐待を受けて育ったので、その反動で「理想の家族を作りたい」という思いが強すぎたのか、結婚して数年間は家族ファーストになりすぎてしまった時期がありました。たとえば「家族のために頑張っていて偉い」と褒められたいがために、慣れないおせち作りに奔走したり。

 

また、結婚してしばらくすると夫が体調を崩し、何度か救急のお世話になりました。看病、サポートをしていましたが、「いつ呼ばれるかわからない」「いつ対応を求められるかわからない」そんな待機モードが続くので、時間はあるはずなのに、自分のことは何も手がつけられませんでした。

 

看病をしている間は無我夢中で、夫が回復に向かうことだけが自分の目標になっていました。でも治療がひと段落して穏やかな日常が戻ってくると、心にぽっかり穴が空いた感覚になったんです。それまでは自分のエネルギーのすべてを「夫を支えること」に注ぐ生活でしたが、いざその役割がなくなると、自分自身のために何かを積み上げたと誇れるものがなく、ただ時間だけが過ぎていくように感じたんです。

 

── 家族を思うこと=義務感になってしまった?

 

松尾さん:そうですね。だから自分の生活と家族とのバランスを定期的に見直したほうがいいのかなと思いました。時には立ち止まって、無理していないかなと考える。疲れているけれど、家族のためにご飯を作らなきゃいけないと思ったときは、無理しているってこと。そもそも私は「きちんとした自分じゃないと、家族という居場所が維持できないのでは」という恐怖心があったのだと思います。今は出前を取るなど、ちゃんと家事ができない自分でもいいと受け入れられるようにしました。