きょうだい児であるふたりの娘との向き合い方

運上佳江
長女、中学卒業にて

── 三女と四女にとって、医療的ケアが欠かせない2人の姉は、どんな存在なのでしょう。

 

運上さん:下の子たちのおままごとを見て、姉たちのケアを当たり前のこととして受け止めているんだと気づきました。普通なら、ぬいぐるみにご飯を食べさせるときは口元へ運びますよね。でも、うちの子たちは、ぬいぐるみのお腹に食べ物を押し当てるんです。私が姉たちの胃ろうから栄養を注入する姿を見ているので、人には口から食べる人と、お腹から食べる人がいると思っていたようです。

 

姉たちのよだれを拭くこともありますが、長女にはお姉ちゃんとしての威厳があるようで、「お姉ちゃんは怖い」らしいです(笑)。小さい頃は姉たちの指をしゃぶったり、隣に寝転んだり。デイサービスでもらったお菓子を「食べてもいい?」と聞いたり、「お姉ちゃん、笑っているね」と表情を読み取ったり。下の2人なりに、姉たちとの関係を築いてきたんだと思います。

 

ただ、成長するにつれて「お姉ちゃんがいるからできないこと」への戸惑いも出てきました。下の2人が「外に遊びに行こう」と言っても、祖母から「もうすぐお姉ちゃんたちが帰ってくるから待っていて」と言われることもあって、「遊びに行きたい」という気持ちが爆発し、家の物や姉の枕を投げることもあります。姉の存在を理由に我慢させるような伝え方は、しないほうがいいと感じています。

 

── 姉を大切に思ういっぽうで、「お姉ちゃんがいるからできない」という我慢も生まれる。きょうだい児である下の2人の気持ちに、どう向き合っていますか。

 

運上さん:幼い頃から下の子たちには「あなたはあなただから」と伝えています。自分からやりたいと言ったとき以外は、お姉ちゃんのケアを手伝わなくてもいい、と。「今はお姉ちゃんの体調が悪いから協力してね」と家族としての助け合いをお願いすることはあっても、基本的には彼女たち自身の時間を優先しています。

 

仕事や姉たちの付き添いから帰り、夕食を済ませてから、もう一度公園へ連れていくこともあります。正直、体力的にはきついです。それでも、昨日は三女、今日は四女というように、できるだけひとりずつと出かける。近所のスーパーまで手をつないで歩きながら「保育園で何をしたの?」「今日は誰と遊んだの?」と話す。他愛もない会話でも、その子だけと向き合う時間を持つようにしています。

 

「4人もいると、愛情は4等分になるんですか」とよく聞かれます。でも、4等分ではなく、それぞれに100%あるだけ。その時間を作るためなら、家がぐちゃぐちゃでも、ご飯がレトルトでもいい。「みんなが生きていればオッケー」くらいに割りきっています。

「将来の介護は担わせない」親なきあとの決断 

── きょうだい児である下のお子さんたちのケアで、大切にされていることは何ですか?

 

運上さん:同じ立場のきょうだい児と交流できる場には、参加させたいと思っています。もし家族と少し離れたいと思う時期が来たら、夏休みだけでも支援団体の活動に参加するなど、無理に家族と一緒にいさせない選択肢も持たせたいですね。私自身も周りのきょうだい児をボランティアで預かり、ご飯を食べながら「彼氏、どうなの?」なんて話を聞くことがあります。

 

娘の友達にも、お姉ちゃんに脳性麻痺がある子がいます。2人で「私のお姉ちゃんは歩かないんだ」「うちもだよ」と話しているんです。悩みを打ち明け合うというより、今はまだ「同じだね」と無邪気に確かめ合っている感じですね。これから複雑な思いを抱くようになったときにも、そうして話せる相手がいてくれたらと思います。

 

学校や保育園の先生にも、下の2人が姉たちのことを話したときは、まず気持ちを聞いてあげてほしいとお願いしています。「そう思ってもいい」「やりたくないことは、やらなくていい」と伝えてください、と。

 

── 親としては、いずれ自分がいなくなったあとのことも考えると思います。きょうだい児である下の2人に、家族として何を求め、何を背負わせないのか。運上さんはどう考えていらっしゃいますか。

 

運上さん:私が死んだあとは、上の2人には施設で暮らしてほしいと思っています。ただ、できれば離れ離れにはせず、同じ施設で、部屋は別でも会える距離にいてほしい。次女は長女の顔を見るとよく笑うんです。長女を支えにしているところもあると思うので、上の2人が会える環境は残してあげたいですね。

 

Vici症候群は長く生きることが難しい病気だと聞いています。娘たちに無理な延命は望んでいません。そして、下の2人に将来の介護を担わせるつもりもありません。だから今から、「あなたはあなた。お姉ちゃんたちの世話をしなくてもいい」と伝えています。下の2人には、姉たちの介護ではなく、自分たちの人生を生きてほしいと思っています。

 

取材・文:西尾英子 写真:運上佳江