「健常児の育児って、こんなに大変なんだ」。重度障害のある上の子2人を育ててきた運上佳江さんにとって、後に生まれた健常児2人の育児は戸惑いの連続でした。きょうだい児である娘たちとの関わりや、親なきあとへの思いとは── 。
「健常児の育児って、逆にこんなに大変なんだ」

── Vici(ヴィシ)症候群(先天性疾患で、重度発達遅滞、脳梁欠損、眼、皮膚、白色症、易感染性、心筋症など伴う)という難病を患い、医療的ケアが欠かせない長女と次女を育てながら、重い障害のある子どものためのデイサービスを立ち上げた運上佳江さん。現在は4人の娘を育てています。長女と次女が遺伝のある病気だとわかっているなかで、再び子どもを持つことに迷いはありませんでしたか。
運上さん:すごく迷いました。「また障害のある子だったら」という怖さがあったんです。夫には、3人目の子どもについて考えたとき「もし障害が遺伝していたら、ごめんね」と伝えました。すると「それはそれで育てればいいよ。誰も悪くないんだから」と言ってくれて。そのひと言に救われましたね。
それでも不安は消えず、三女のときは、無事に生まれるまで周囲に妊娠を伝えていませんでした。結果的に三女と四女には障害がありませんでしたが、今度は初めての健常児育児が怖くなったんです。
── 「健常児の育児が怖い」とはどういうことでしょうか。
運上さん:健常な赤ちゃんを育てたことがないので、何もかもわからなくて。手足をバタバタと動かすだけで「てんかんの発作では」と慌てました。私の姿を目で追ったり、声や表情で意思を伝えたりすることにも、いちいち驚いて。特別なリハビリをしなくても首がすわることにもびっくりしました。
上の2人は病気や障害に合わせて成長を見守ってきましたが、三女には「標準どおりに大きくしなければ」という、これまでとは違う責任を感じました。「ミルクは飲んでいるけれど、本当に大きくなっているのか」「これで合っているのか」、不安でたまらなかったです。
── 上の2人とはあまりに違う成長や反応を前に、喜びよりも、戸惑いや怖さが勝ってしまったのですね。
運上さん:一度、あまりに不安になって、三女を上の娘たちの主治医に診てもらいたいと頼んだこともあります。周囲からは「元気だから大丈夫」と言われました。それくらい、恐る恐るの育児だったんです。
また、保育園はデイサービスとはまったく違い、離乳食の進め方にも細かな決まりがあります。
長女と次女は飲み込みが弱く、離乳食を始めても思うように食べることができませんでした。
しかし三女と四女は食べることはできるし、好き嫌いもあって、好きなものはもっと食べたいと自分で掴んで食べる。そんなことまでできるのかと驚きました。
また、動き始めれば目も離せません。「健常児の育児って、逆にこんなに大変なんだ」と思うほど、すべてが戸惑いの連続でしたね。