『トイ・ストーリー』の魅力は「願い」
── 30年以上にわたって、5作品が作られた『トイ・ストーリー』シリーズは全世界で親しまれています。長く愛されている理由はなんだと思いますか。
北原さん:おもちゃ目線のストーリーで、「おもちゃの幸せは子どもに遊んでもらえること」が描かれたすごくいい映画ですよね。僕は、大事にすると、ものにも生命があるように思えるんです。ディズニー作品のなかでもこれだけ長く続いている理由は、子どもたちに「ものを大切にしてほしい」とか、「優しい気持ちが芽生えてほしい」という願いが込められているからだと思います。
『トイ・ストーリー』に登場する、悪ガキのシドが、おもちゃを壊したり改造したりしていますが、実は僕も子どもの頃にやっていました(笑)。ロボットに花火の動線を結びつけて、土管の中を歩かせて爆発させて。土管の中だからものすごい音がするんです。僕が破壊してしまったロボットは、映画『禁断の惑星』に出てくる「ロビー・ザ・ロボット」なんだけど、なかなか手に入らないものなんです。大人になって後悔しました。ロビーをそばに置いておきたいと思って、以前住んでいた家には、映画で実際に使用した2メートル強の等身大ロビーを玄関に置いていました。
──『トイ・ストーリー5』では、デジタルとおもちゃの対決が描かれているそうです。夏休み中ということもあり、子どもがゲームや動画から離れないと悩むご家庭も多いのですが、北原さんご自身は、子どもたちがデジタルに触れることをどうお考えですか。
北原さん:僕らの頃は携帯もないし、糸電話くらいだったんだけど(笑)。デジタルの普及で、自分で想像するより、提供してくれることが多くなってきたのかなと感じますね。たとえばおもちゃの飛行機で遊ぶとしたら、実際には飛ばないおもちゃを手で飛ばしてみて、まるでパイロットになって飛んでいるような気持ちになるという空想ができます。デジタルは、自分で想像するのではなく、向こうから与えてくれるものですね。
僕は、どっちも違ってどっちも面白いと思うから、いい悪いはないと思っています。デジタルからしか得られないものもあるし。これからの時代、デジタル機器の操作ができないのはちょっと大変ですね。僕なんてすごく苦手だし。でも子どもたちには、おもちゃでたくさん遊んでほしいという願いはありますね。
── 子どもの頃から好きだったおもちゃを集め始めた北原さんのコレクションは世界からも評価を受けていらっしゃいます。コレクションを続ける思いについて教えてください。
北原さん:『トイ・ストーリー』にも描かれているように、おもちゃは本来、コレクションとしてではなく、子どもたちが遊ぶことを目的として作られています。でも、誰かがそのおもちゃを残していかないと、この世から消えていってしまう。メイドインジャパンのおもちゃにしても海外のおもちゃにしても、ものすごい数が捨てられてしまって、もう存在していないものもあります。
僕の夢は、すべてのコレクションを展示する20世紀博物館を作ることです。僕のコレクションからは、戦前から20世紀の人々の暮らしが見えてきます。それを次の世代に残していきたいんです。場所があるのならば、すべて寄付をしてもいいと思っています。マカオで、名乗り出てくださった方がいてグラっと来たこともあったんですが、やはり日本で実現したいという思いがありますね。次の世代に残していくという役割と使命感を持ってコレクションを続けています。
取材・文:内橋明日香 写真:北原照久