世界中で30年以上愛され、第5作目が公開されている映画『トイ・ストーリー』シリーズ。実は1996年に日本で公開された『トイ・ストーリー』の監督は、『開運!なんでも鑑定団』のおもちゃ鑑定士としても知られる北原照久さんのもとを映画の制作前後に何度も訪れていたそうです。そこで起きた知られざるエピソードとは── 。

『トイ・ストーリー』監督は「おもちゃが生きているみたい」

倉庫のコレクションと北原さん
広さ1200坪!おもちゃのコレクションを保管している倉庫で

── 現在公開中の映画『トイ・ストーリー5』が世界中で話題を集めていますが、1996年日本公開の『トイ・ストーリー』、2000年日本公開の『トイ・ストーリー2』で指揮をとったジョン・ラセター監督は、北原さんのおもちゃコレクションを見るため何度も博物館を訪ねていたと伺っています。

 

北原さん:ジョン監督が、僕が海外向けに出版したおもちゃに関する本を読んで、「ぜひ伺わせてください」と言って来たのが、僕が40年やっていたブリキのおもちゃ博物館です。

 

うちに来ることはいつでも大歓迎でした。おもちゃがたくさん書いてある柄の服を着てくるほどのおもちゃ好きで、「あなたのおもちゃはまるで生きているみたいだ」と感動して、写真をたくさん撮っていました。『トイ・ストーリー』を作る前もあとも何度も来ましたし、おもちゃを保管している1200坪の倉庫にも来たことがあります。

 

── 北原さんのコレクションのなかに、『トイ・ストーリー』に登場するキャラクターがたくさんいるそうですね。

 

北原さん:ウッディもバズ・ライトイヤーも、他のキャラクターも、一つひとつのモデルがうちにいるんです。胴がバネ状の、スリンキー・ドッグのモデルになったワンちゃんは、1950年代のおもちゃで。ジョン監督が「あれを探しているけど、なかなかないんだ」と言っていました。たしかに、あまりないものなんですよ。

 

「絶対に人にあげない」って思っていたんだけど、たまたま2つ持っていたし、探しているようだったのであげることにしました。でも、ただあげるのもつまらないから、どうやって渡そうか考えてね。ケーキが入っている箱に入れて「これ、プレゼント」と言って渡しました。ケーキかと思って開けたらサプライズ!です。「Wow!」と驚いて喜んだ姿がとてもかわいかったです。

 

── 監督との交流がきっかけで、フロリダのディズニーワールドで北原さんのコレクションを展示するイベントを開催されたこともあったそうですね。

 

北原さん:ジョン監督がタイトルをつけてくれたイベント「Tin Toy Stories made in Japan」で僕のコレクションを展示しました。監督からのビデオメッセージも流してね。期間は3年の予定だったんですが、大好評で6年開催しました。長くなってくると僕のものじゃなくなっちゃう気がして、6年で終わらせたんですけどね(笑)。

北原さんがモデル!?悪役説の真相は

──『トイ・ストーリー2』に登場する、おもちゃ店主のアルは北原さんがモデルになったというのは本当ですか。

 

北原さん:あれね、違うんですよ。ウッディを日本のおもちゃ博物館に売り飛ばすっていう悪役で、みんな僕だと思っているんですよね。でも、彼からそんな話は聞いていないし、もし出してくれるとしても、悪役ではないと思うなぁ。こんなに感激して何度もうちに来たいと言ってくれているのに、日本人におもちゃを買わせる悪役って(笑)。

 

でもね、アメリカのおもちゃが日本人に買われて連れてこられる話には理由があるんです。実は1960〜70年代当時、日本のおもちゃは輸出用として作られていて、全体の8〜9割が海外に輸出されていたんです。なので、当時のアメリカの子どもたちが遊んでいたおもちゃの多くはメイドインジャパン。それを買い戻したい日本のコレクターは多いですね。

 

あまり知られていないのですが、日本の外貨獲得の立役者はおもちゃでした。当時は1ドル360円。人件費が安く、精巧に作られていた日本製のおもちゃが海外から人気だったんです。スティーブン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』に登場する、ブリキのおもちゃはみんなメイドインジャパンで、彼自身が子どもの頃に遊んでいたものをイメージしたとも聞きました。僕としては日本のおもちゃが映像で使われているのはすごく嬉しいです。

 

── おもちゃを通じて、著名人との交流もあるそうですね。

 

北原さん:コレクションを貸し出して映像が作られることがたびたびあるのですが、スティーブン・スピルバーグ監督や、ジョージ・ルーカス監督も僕のおもちゃを使って作られた作品を観て大変喜んでいたと聞きました。おもちゃ工場を舞台にしたロビン・ウィリアムズ主演の映画『トイズ』には、うちのおもちゃが使われているので、エンドロールに僕の名前が出てきます。

 

ディズニーのコレクターで、元ビートルズのポール・マッカートニーは僕を食事に招待してくれて。奥さんのリンダさんと一緒に楽しい時間を過ごしました。ものを集めていたおかげで、これまで会えないような人と出会えましたし、コレクションが作品のイメージに繋がるというのはすごく嬉しいですね。本当に、おもちゃの恩返しです。

 

アメリカにもたくさんコレクターがいるんですけど、「山ほどいるコレクターのなかで、こんなに美しくコレクションしている人はいない」と。僕は壊れているおもちゃは必ず直して綺麗に飾っているのですが、これが僕のところに来る理由だそうです。