今の子たちは「文字を打つ」ことさえしない
もっとも、先生たちは今の子たちの顕著な変化も感じると言います。特に深刻なのが「書く力の低下」です。

「まず、学校の宿題の量は明らかに減りました。特に漢字練習帳やドリルのような反復練習をさせる宿題が減った結果、学力の土台といえる基礎の漢字や計算ができる子、できない子の差が激しくなっていると思います。加えて、スマホの予測変換などで漢字が出てきてしまうので、正しい漢字を正確に書けない子が多い。たとえば、中3でも 『制服』の『制』を左の上縦棒を突き出さずに書いて間違うといったこともあります。これは単なる勉強不足というより、デジタル環境に慣れきったことによる『視覚的な記憶』と『手書きの出力』のズレが起きている現象だと分析しています。
漢字の意味や使い方を理解せず、音だけで捉える子も増えています。なかには、テストでは自分の知っている漢字のパーツを適当に組み合わせて、世の中に存在しない漢字を生み出してしまうケースも」(湘南ゼミナール・中河内先生)。
影響は国語のみならず英語にも出ており、中学生になっても、英語をローマ字感覚で書いてしまう子も。たとえば『I want to(私は~したい)』を『I wont』、『bike(バイク)』を『baiku』、『summer』を『samar』と書いてしまう、『beautiful』が書けないなど、発音とスペルが違う単語に混乱する子が一定数いるといいます。
こういった状況は、今の子どもを取り巻く環境変化も大きいのではという見方もあります。「生まれたときからデジタル・SNSネイティブ世代なので、小学生から友達とLINEが当たり前。しかも『ありがとう』『ごめん』などの感情は、スタンプひとつで表現できます。親御さんは、手書きからキーで打つ手法に変わった世代だと思いますが、今の子どもはもう打つこともしない。インスタントなコミュニケーションが日常化しています。便利な反面、こういうことも『書く力の低下』の遠因かもしれません」(栄光ゼミナール・髙尾先生)。
いっぽうで、髙尾先生は「知識そのものの定義が変わってきている」と指摘します。「スマホがこれだけ普及した今、情報へのアクセスのしやすさは昔とは比べものにならず、人間が知識を頭に入れておく必要性そのものが薄れているともいえます。以前は学力をはかるひとつの目安が『どれだけ知識を頭の中に入れているか』でしたが、今は『必要なときに端末でいかに的確に調べて応用できるか』に変わりつつあります」(栄光ゼミナール・髙尾先生)。
高校受験は「昔より確実に難しくなっている」
とはいえ、現状の高校・大学受験では、デバイス持ち込みは禁止。求められるのは「自分の頭だけで考え、答えを導き、手書きで回答する力」です。今の学校教育で、受験に対応できるのでしょうか。
どちらの塾も、学校と塾は対立するものではないとしたうえで「高校受験は以前より難化している」と言います。
たとえば英語は、入試問題は長文化し、『Pollution(汚染)』『Drought(干ばつ)』など、英検2級~準1級レベルの単語が出ることも珍しくないといいます。国語も今の問題の文章量は親世代に比べ約1.5倍以上に増加しており、資料、グラフを読み比べたうえで解かせる複雑な問題も多いとか。数学では、以前は最難関校だけで見かけた難問が、今では公立の自校作成問題で出題されることもあるといい、こういったテスト対策までを学校の授業でフォローするのは難しい、というのが両塾の見解です。