今度こそ、私自身がスーパーヒーローになりたい

── そんな寡黙だった林下さんですが、高校卒業後、プロレスラーとして活躍するようになります。
林下さん:きっかけは中学2年生のとき。父と兄がプロレスを見ていたので、私もたまたま一緒に見たら、ハマってしまって。高校に進学せずにプロレスラーになることも考えて父に相談したこともあります。ただ、「高校には行ったほうがいいんじゃない」と言われて、当時は進学を決めました。
その後、高校を卒業する頃になると、上のきょうだいたちが就職をして、下のきょうだいたちの学費を出していたので、自分も同じようにお金を出そうと、卒業後は飲食店に就職することに。でも、就職で東京に出ると、以前よりプロレスを観戦する機会が増えて、プロレスラーへの思いが再燃していったんです。
就職して1年くらい経ったある日、仕事帰りに衝動的にコンビニで履歴書を買い、帰宅してすぐに履歴書を書き上げて、プロレス団体「スターダム」の事務所に送りました。
── プロレスラーはステージでの華やかな活躍などがあり、とても素敵な職業です。いっぽうで心身共に過酷なイメージがあります。改めてなぜ、プロレスラーになろうと思ったのでしょう?
林下さん:たしかに痛そう、キツそうだとは思いましたが、それ以上に自分を変えたかったんです。『ビッグダディ』の影響で人に対して警戒心が募り、家族以外としゃべれなくなった学生時代の自分から変わりたいと。趣味が家族っていうくらい、家族のことは大好きですが、いつまでもこのままでいいわけもない。「強みが何もない」なんて言っていないで、「私自身がスーパーヒーローみたいになりたい」って、そのときに心から思ったんです。
── プロレス団体スターダムの入団が決まったとき、家族の反応はいかがでしたか?
林下さん:かなり驚かれたし「人前に出る仕事だけど大丈夫?」って心配されました。実際、自分を変えたくて入団したものの、入団当初は声が小さくて「大声出せ!」ってよく怒られて。道場で大声を出す練習もしていました。
── 2018年8月、後楽園ホールにてプロレスラーとしてデビュー。2020年には団体の最高峰である赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)も初獲得するなど、女子プロレスラーとして活躍が続いていきます。プロレスラーになって変わったことはありますか?
林下さん:今はプロレスのスイッチが入ったら人前でも大丈夫になりましたし、やっとひとりの人間として自信が持てた気がします。プロレス以外の場では相変わらずおとなしいですけど、以前に比べたら明らかに会話もできるようになったと思います。