乳がんの全摘手術からわずか3週間後、歌手・麻倉未稀さんはステージに復帰。傷口の痛みによる肺活量の低下などがもたらす声の変化への懸念という、歌手生命を揺るがす現実を、驚くべき探究心で克服します。痛みを避けるために編み出した呼吸法、そして比叡山で運命的に出会った「声明」。これらが彼女の歌声にもたらした変化と、病を経て得た人生観について伺いました。

乳がん手術「術後3日で歌えるわよ」と励まされ

── ヒット曲『ヒーロー』では高音域をパワフルに歌い上げていた麻倉未稀さん。乳がんで乳房の全摘手術やホルモン療法を受けることになった際は、「今後も歌えるのか」という不安が大きかったそうですね。

 

麻倉さん:主治医の先生には「手術後も変わりなく歌えるのか、どうすればいちばん早くステージに復帰できるのか」という歌手としての不安を第一に伝えました。先生は「術後3日もすれば歌えるよ」と励ましつつ、私の不安に一つひとつ丁寧に応えてくださいました。

 

たとえば、全身麻酔の際。のどに太い管を通すのですが、手術後に管を抜くときに声帯を傷つける可能性があります。そのリスクについては、「声帯を傷つけにくい特殊な管を使って麻酔をかけましょう」と、提案してくれました。

 

麻倉未稀 富田京子
がんには「怖い」「難しい」イメージがつきまとう。だからこそ、麻倉未稀さんと富田京子さんは歌のパワーを使いながら情報を発信している

── 手術やその後の治療を受けながら、それまで通りの活動ができるのかどうかは、気になるところです。その不安をしっかり主治医の先生に伝えたことが功を奏したのですね。実際のところ、術後はどのくらいで歌えるようになったのでしょうか。

 

麻倉さん:先生は手術翌朝の回診から「どう?歌ってみた?」と聞いてきて(笑)。私も「さすがにすぐは…」と言いながら、その勢いに励まされ、その日のうちに病室で少しずつ声を出す練習を始めました。

 

ただ、歌って全身を使います。手術の影響で体幹がふにゃふにゃしていて、なかなかいい声が出なくて。そこで、胸から上のリハビリにプラスして、リハビリの先生に指導してもらいながら、ストレッチやスクワットなどもしました。そのかいあって、すぐに先生の前で『アメイジング・グレイス』を披露することができたんですよ。