難病であるHTLV-1関連脊髄症を発症し、現在車椅子で生活をしている有本奈緒美さん。DVによる2度の離婚や難病の診断。苦しみの連続の中で有本さんを支えたのは現在の夫の存在でした。しかし結婚に至るまでには深い葛藤がありました。
中学時代にいじめを経験、うつ病になった

── 足のもつれやしびれなど歩行障害が進行し、寝たきりになる可能性のあるHTLV-1関連脊髄症を発症し、現在車椅子生活を送っている有本さん。現在、旦那さんと3人のお子さんとの5人で暮らされていますが、2度の離婚を経験されているそうですね。
有本さん:ひとり目の夫は高校時代バイト先が一緒でおつき合いしていた人で、同棲ののち、20歳で結婚しました。高校卒業後、私はうつ病と診断されて感情のコントロールができない状態だったのですが、彼の存在が安心できる居場所になっていました。
── うつ病で苦しまれていた背景についてうかがってもいいでしょうか。
有本さん:そもそもは中学時代のいじめが影響しています。中学1年のときにいじめが始まり、廊下ですれ違うたびに「死ね」と言われたり、上履きをゴミ箱に捨てられるのも日常茶飯事でした。親に相談して先生に訴えても「いじめはない」と認めてもらえず、結局いじめは3年間続きました。
── 有本さんは実際に苦しんでいたのに、ひどいですね…。その後、環境を変えようと偏差値の高い高校を目指し合格。高校入学後は看護学校受験の予備校にも通われていたそうですね。
有本さん:小学生の頃から看護師になることが夢で、高校でも3年間、必死に勉強していました。でも、同じ目標を目指す者同士の競争のなかで、周りのできる子と比べて劣等感を抱くことに。しかも受験直前の模試の結果に、「こんな成績では入れないよ」と予備校の先生に強く言われてしまって。その言葉で心がポッキリと折れ、受験を諦めてしまいました。
看護師の夢は諦めましたが、それでも「医療に関わりたい」という思いまでは消えず。高校卒業後は医療秘書になるための専門学校に入学したんです。でも人間関係がうまくいかなくて。中学時代のいじめの経験が思い出されてしまい、心身を壊してわずか3か月で退学しました。
2度目の結婚生活のなかでウイルス感染が発覚
── その後うつ病と診断され、有本さんの支えになったのがひとり目の旦那さんなんですね。
有本さん:彼の存在が安心感につながったのか、同棲を始めてからうつの症状が少しずつ改善していきました。結婚の翌年には長男を出産し、ようやく安定した幸せを掴んだと思った矢先、今度は夫の暴力や暴言が始まったんです。面と向かって尋ねたわけではないのではっきりとはわかりませんが、他に好きな人ができたようで。突き飛ばされて肋骨が折れたこともあり結局、離婚に至りました。
── シングルマザーになり就職した会社で出会ったふたり目の旦那さんと28歳のときに再婚。第2子の妊娠中の血液検査でHTLV-1ウイルスに感染していることが判明します。
有本さん:実際に症状が出始めたのは3人目の子どもが生まれてからです。だるさや発熱が続き、だんだんと足のしびれを感じて、歩くと足がもつれるようになりました。
でも、当時の夫は私の病気についてあまりピンときていないようで。体調不良だったものの、夫から「家計のために働いてほしい」と言われ、3人目の子の出産から半年後にはデイサービスで働き始めました。夫はトラックドライバーで、毎日早朝に家を出て23時ごろに帰ってくる生活。ほぼワンオペ育児でした。
── 病状が進行するなか、家事・育児も仕事もひとりで抱えて大変だったのではないですか。
有本さん:子どもにゆっくりご飯を食べさせる時間もなく、息つく暇もない生活でしたね。夫は気性の荒い人で、結婚後は怒るとモノを投げたり壊したりするようになりました。だんだん夫と血のつながっていない長男への態度が悪化し、暴力をふるおうとしたので子ども達を連れて家を出ました。