「筋肉ないの?」子どもの素直な言葉に
── とても有意義な研究だと思いますが、先ほどの子どもの言動のように、傷ついてしまうこともあるのでは…?
瀬戸山さん:周りから「物好きだね」って言われたし(笑)、実際活動をはじめてみると、やっぱり子どもにジッと見られました。私は笑うと右の口角が上がって左が下がるので顔真似をされることもあって。でも、この活動自体は面白かったんですよ。
あるとき、お話会に参加した子が私の顔をジッと見て「どうしてそういう顔なの?筋肉ないの?」って聞いてきたんです。すごいなって思って。ちょうどその日のお話会では筋肉について説明していて、「笑った顔も怒った顔も筋肉があるからなんだよ」という話が出てきていたので、純粋に質問してくれたんだと思います。
「そうなの。筋肉がないわけじゃないんだけどね」と自分の症状について説明しました。大人は触れちゃいけないと腫れ物のように扱うところを、子どもは素直に聞いてくる。とてもびっくりしましたが、体の仕組みでそうなってしまっていると伝えると、その子なりに、理解してもらったようで私自身が救われた気がしました。
その後もほかの子どもたちが私の顔を見ては「なんで?」と聞いてきましたが、私も説明しながら「筋肉は動かないけど、やっぱり変な顔って言われると悲しい気持ちになるんだよね」と、自分の気持ちを次第に言えるようになりました。
── 瀬戸山さんにとっても大きな変化というか。
瀬戸山さん:そうなんです。その後も顔の麻痺を受け入れるまでずいぶん時間が掛かりましたし、今でも嫌だなって思うことは時々あります。でも、その時の経験が前を向く大きなきっかけのひとつになった気がします。
顔の麻痺で誰にも会いたくないし、子どもの言動や周囲からの視線に気持ちがこわばることもありました。でも、子どもに体のことを教えるプロジェクトに参加したことは、私自身が逆に励まされる出来事でした。
── 瀬戸山さんがうちにこもらず、外の声を聞いたことも大きかったのでは?
瀬戸山さん:ありがとうございます。そういった面もあったかもしれないですが、その時の思いや行動は、人によってそれぞれです。ご縁や出会いがあったことはありがたかったと思っています。
── 改めて、今までの人生を振り返ってどう思いますか?
瀬戸山さん:今は病気にならなかった日々が考えられないです。もちろん顔の麻痺で誰にも会いたくない時期はありましたし、今でも顔に痛みはあります。食事はうまく食べられず、ポロっとこぼれることも。
手術を経て大学復帰した当時も、2つ学年を下げたので、同級生は先に卒業して看護師に。「夜勤が大変だ」「処置が難しい」という会話を聞いては、ずいぶん置いて行かれた気持ちにもなりました。
でもそれは一時期のことです。たくさんの人がいる世の中で、病気や障害を患ったことで出会った人もいますし、勉強させてもらっている気持ちもあります。外見でわかる、わからない関わらず、みなさんいろいろな思いを抱えながら生きている。「外から見えても見えなくてもみんないろいろあるよね」と思えるようになりました。
取材・文:松永怜 写真:瀬戸山陽子