自分の意思とは無関係な動きや言葉が出るチック症。そのことが原因で過去にいじめ被害にもあったへちさんですが、SNSで公表を決断し、大きな反響を呼びました。手が震えてグラスを持ち続けられない、静かな場所に居続けるのも難しい。周囲に理解されづらい当事者の日常のリアル。あなたはどれだけチック症のことを知っていますか?
渡米してまで治療に、金銭的な負担も

── 自分の意思とは無関係に体の一部が動いたり(運動チック)、声が出たり(音声チック)するチック症。複数の運動チックとひとつ以上の音声チックが1年以上持続するとトゥレット症候群と呼ぶそうです。
へちさんは子どもの頃からトゥレット症候群を患っているそうですが、高校生の時にアメリカの病院でトゥレット症候群患者に向けたマウスピースを装着すると、劇的に症状が改善されたそうですね。
へちさん:私を治療してくださった先生が歯科治療でトゥレット症候群の治療をしている先生で、チックを抑えるためのマウスピースを作っていて、私にはすごく合っていたようです。
20歳くらいまでつけていたのですが、マウスピース自体、当時で60万円ほどもする高額なもので、診療代も保険適用ではないので1回10万円超えることも。3か月に1回、メンテナンスで渡米しなければいけないので、金銭的な負担が大きくて。マウスピースをつけることで顔の形も丸くなってしまい、症状が落ち着いてきたのを機につけるのはやめたんです。
── 小・中学時代は授業中に叫び出す、壁に頭をぶつけてしまうなど、深刻な症状に悩まされていたへちさん。渡米までしたマウスピースの治療によって、症状が軽減されたいっぽうで、このマウスピースが想定外の問題を引き起こしたとか。
へちさん:そのマウスピースを着けたのは、アジア人では私が最初だったんです。医師が「医学の発展のために」と装着した動画の撮影を希望し、私も「役に立つなら」と引き受けました。でも、高校を卒業して1、2年経った頃、その動画がどこかでバズったようで…。しかも、幼い女性に興味を抱くような扱い方で拡散されていたんです。ショックでした。
高校は単位制の学校だったので、同級生にはチック症のことは隠していたのですが、この動画でそれも水の泡になってしまいました。
── 高校卒業後は4歳から続けていたバレエ留学をするために渡英したと伺いました。マウスピースで治療する前は、症状は出ていましたか?
へちさん:マウスピース関係なく、私の場合は踊っている時は出なかったです。練習やレポートに毎日追われてハードでしたし、みんな自分のことで精一杯だったので、そもそもトゥレット症候群について気づかれることがなかったですね。他人のことにそこまで興味がないというか、「私はチックが出るんだ」と言っても「あぁ、そうなんだ」くらいで。中学でいじめられた経験があるので、その環境は私にとっては楽でした。