出自を伝えた絵本裏に書かれた「ありがとう」

ジュリワタイ
現在8歳になる娘さんから父親のことを聞かれることがあっても決して誤魔化したり逃げたりしないと決めている

── 自作絵本を最初に読み聞かせた時のことを覚えていますか?

 

ジュリワタイさん:娘の名前が絵本に登場するので「え?これ、私のこと?」というような反応でした。最初は内容についてよくわかっていなかったと思うんですが、すごく気に入ってくれて、週に3回ぐらいは読んでいましたね。

 

あるとき、本の裏に「ありがとう」という言葉が書かれていたんです。私の知らないところで娘が自分の色鉛筆で書いてくれたようでした。「どうして『ありがとう』って書いてくれたの?」と聞くと、「ママが私のためにこの絵本を作ってくれて、嬉しかったから」と言ってくれました。

 

── 娘さんが父親について尋ねてくることはありますか?

 

ジュリワタイさん:絵本を読みながら、「この人はどこにいるの?」「どんな人?」ということはもちろん聞かれます。初めて聞かれたのは、3~4歳のときだったと思います。そのころには、他の家庭と比べてうちの家庭は少し違うかもしれない、というのを自分なりに理解しているようでした。

 

そのような疑問がでたときは必ず答えるようにしています。ただ、「今は会える状況にはない」ということを素直に伝えています。

 

── 今は「会える状況にはない」と伝えているとのことですが、将来、娘さん自身が「会ってみたい」と望んだ場合はどう考えていますか?

 

ジュリワタイさん:彼にも生活があるので密に連絡はとるべきではないと考えていますが、娘が望んだ場合は打診するつもりです。ただ、彼には彼の生活があります。妊娠当時はとても大変な状況にありましたし、私自身、彼が私たち親子に関わらない理由も理解しています。だから今は、ひとりの人として幸せでいてほしいと思っています。

 

会うことについてはもちろん断られる可能性はありますが、別れてから時間は経過していますし、彼の考えや状況が変わることもあると考えています

 

── 今後お子さんが思春期に入り、出自についての疑問や解釈が変わってきた場合のことはどう考えていらっしゃいますか?

 

ジュリワタイさん:確かに思春期になると難しくなることも増えるだろうと思っています。今のところは、顕微受精したとき受精卵の写真を見せながら、「こうやって生まれ出たんだよ」「無事受精した時は本当に嬉しくてね」というように、授かったときの喜びの気持ちを伝えるようにしています。子どもは「すごっ!」と笑いながら聞いてくれていますが、これがきっかけで性の話も我が家ではスムーズにできていて、結果的にいい流れになったと思っています。

 

自分の出自について「聞いてはいけない」という雰囲気にはしないと決めています。「聞いたらママが嫌な顔するから」というような気遣いをさせないよう、聞かれたことには正直に答えていくつもりです。

 

── 娘さんとのやり取りのなかで、印象に残っている出来事はありますか?

 

ジュリワタイさん:娘が小学生になってしばらくしたころ、寝る前に2人でおしゃべりしていると「感動したことってある?」と突然聞かれたことがありました。「あなたはどう?」と聞き返すと、「私が初めて感動して泣いたのは、ママが作ってくれた私のルーツの絵本をもらったとき」と言ってくれました。

 

自分がくだした決断が本当に正しかったのかは、きっとこれから先も考え続けるんだと思います。ただ今のところは、娘は幸せを感じてくれているんだな、と思えています。

 

取材・文:石野志帆 写真:ジュリワタイ