寝返りをうつ愛くるしさやクルクルと動き回る元気さなど、愛おしいペットたち。ただ、いつかは別れのときが来ます。渡辺えりさんもそのひとり。16年ともにした愛猫、18年一緒に過ごした愛犬との別れは何をもたらしたのでしょうか。(全4回中の2回)
亡き愛猫の居場所に立ち尽くす
── 私たちの暮らしに幸福感をもたらしてくれるペットたち。しかし、愛するペットを失った喪失感から「ペットロス」に陥る人が少なくありません。渡辺さんもそうした経験をお持ちだそうですね。

渡辺さん:これまでペットとの別れは何度も経験してきましたが、本当につらいものですよね。動物を飼う以上、いずれ別れがやって来ることは覚悟のうえとはいえ、大切なペットを亡くして、どうしようもなくせつない感情になったり、心が落ち着かず、途方に暮れる気持ちはすごくよくわかります。
私が初めてペットロスを経験したのは、2015年に16年間飼っていた夢彦という猫が亡くなったときでした。夢彦は、近所に住んでいた友人の家で生まれた猫で、雑種だけれどロシアンブルーのようなきれいなグレーの毛色をしていました。勇ましい性格で、近所の猫とケンカして血だらけになって帰ってきても、グッと我慢して平気な顔をしているような子でした。
具合が悪くなって、私の寝室で寝たきりになってからは、動物病院に連れて行って点滴をしたり、注射器で口から栄養剤などを与えたりと、介護の日々が続きました。あんなに大きくて強かった夢彦が、ガリガリにやせて弱々しくなっていくのは、見ていてせつなかったですね。亡くなる1か月前くらいからは、異臭がしていて、死期が近いことを悟りました。結局、私が仕事で地方に行っている間に、夢彦は逝ってしまいました。

じつは、「ペットロス」という言葉を耳にしたとき、自分とは遠い言葉だと思っていたんです。でも気づけば、ベッドの脇や廊下の段ボールの上など、夢彦がよくいた場所で立ち止まって見入ってしまう自分がいることに驚きました。気持ちがなかなか落ち着かず、いなくなったことを受け入れるのには時間がかかりましたね。
── 翌年には、18歳の柴犬・愛子ちゃんとの別れも経験されています。
渡辺さん:愛子とは、ドラマで共演したのが出会いのきっかけでした。役名も「愛ちゃん」、まだ生後2か月の子犬でしたね。あまりのかわいさに別れがたく、タレント犬だった愛ちゃんを動物プロダクションから3万円で譲っていただき、新幹線で京都から東京まで連れてきちゃったんです。その後、獣医さんから「先天的な病気があり、長生きできないだろう」と言われたこともありましたが、17歳と10か月もの時間を一緒に過ごすことができました。
ただ、亡くなる数年前から、両目とも白内障で見えなくなっていて、耳も聞こえていませんでした。柴犬はプライドが高くて我慢強いので、道路の脇の溝に突然落ちたときでも鳴き声ひとつ上げず、なかなか異変に気づいてあげられなかったんです。「もしかして目が見えていないのでは?」と思ったときには、もう手遅れでした。手術を受けさせることを考えましたが、高齢のため、手術に耐えきれずに亡くなる可能性があると聞き、やめたんです。もっと早く気づいてあげていればとよかったと、いまでも後悔していますね。