仕事が忙しいなど、時間を忘れて何かに集中していれば何でもないのに、ふと家に帰り静まりかえった室内を見渡すと、孤独を感じる瞬間はあります。大往生とはいえ、両親を亡くした俳優・渡辺えりさんの胸に去来するものとは。(全4回中の1回)
上京後も月3万円の仕送りを続けてくれた母
── 2024年の11月に最愛のお母さんを亡くされたそうですね。SNSでの更新がしばらく途絶え、心配する声も多かったです。

渡辺さん:母は、昨年11月10日に94歳で亡くなりました。山形の病院に1か月ほど入院していたのですが、たびたび危篤状態になり、そのたびに何度も山形に戻って母につき添っていました。でも、どうしても抜けられない仕事があり、いったん東京に戻った日の夜、眠るように息を引き取ったそうです。本当につらくて、井戸の底に突き落とされたような感覚です。今もがっくりきています。
昨年12月に『徹子の部屋』に出演したのですが、ちょうど母が亡くなった時期でしたから、悲しみをこらえて笑顔を作るのに苦労しました。ただ、舞台もそうですが、幕が上がったら、泣き顔を見せるわけにはいきません。14日に葬儀を行って、翌日から古希連続公演の舞台稽古が始まったので、悲しみに浸っている時間はありませんでした。

── メディアでご両親への思いを語られることが多く、絆の強さを感じます。
渡辺さん:私がこれまで演劇を続けてこられたのは、両親のおかげだと思っています。山形から上京し、演劇活動を続ける私に、母は内職をしながら毎月3万円の仕送りをしてくれたんです。父はずっと手紙を送って励まし続けてくれました。そんな父は、2022年に95歳で亡くなりました。2人とも、ちょうど舞台がない時期に亡くなったので、奇跡的に両親の葬式に出ることができました。役者は、公演が始まると舞台に穴をあけるわけにはいかないので、親の死に目にあえないケースがほとんど。その点、私は幸運でした。母の葬式では、結婚前の父が母に送ったラブレターを朗読して、送り出しました。