鍛え抜かれた肉体美が「奇跡の2.5次元ボディ」と称される注目のコスプレイヤー・桃戸ももさん。新世紀エヴァンゲリオンの渚カヲルをはじめ、人気キャラを完璧に再現したコスプレが話題を呼んでいますが、現在に至るまでには大きな葛藤や喪失があって── 。(全2回中の1回)
※本記事は「自死」に関する発言が出てきます。体調によっては、ご自身の心身に影響を与える可能性がありますので、閲覧する際はご注意ください。
始めての男装は『エヴァ』の渚カヲルくん
── コスプレイヤーとして数々の人気キャラに扮する桃戸さんですが、幼いころからアニメやゲームに興味があったのでしょうか。

桃戸さん:そうですね。幼稚園に通っていたころは『美少女戦士セーラームーン』や『カードキャプターさくら』などのアニメが好きでした。特に、セーラームーンの主人公のうさぎちゃんが大好きで、親にねだって買ってもらった衣装に身を包み、自宅で楽しんでいました。
── コスプレを始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
桃戸さん:高校時代に参加したファッションショーがきっかけでした。小学校のころからものづくりに興味があり、中学と高校では家庭科部に所属。家庭科部では、ファッションショーを毎年開催していたので、それに向けて好きな服をデザインして作っていました。
高校2年生のときは『新世紀エヴァンゲリオン』にハマっていて、「アスカの服を作りたい」と、アスカが着用していた黄色いワンピースを作ることに。ショーでは、アスカ風にヘアメイクして舞台に立ったことが、初めてのコスプレ経験となりました。
このとき「舞台に立って表現することの楽しさ」を経験し、芸能界を意識するきっかけになったと感じています。

── 最近は男装のコスプレでもファンからの人気を集めていますが、男装を始めたのはいつごろから?
桃戸さん:男装のコスプレを始めたのも高校時代です。とはいえ、コスプレを始めたばかりのころは、女性キャラを選ぶことが多かったんです。でも、同じクラスに趣味でコスプレをやっている友達が2人いて。その子たちが男装をやっていたことで、興味が広がっていきました。初めての男装は『エヴァ』の渚カヲルくんか、『弱虫ペダル』の御堂筋翔くんだったと思います。
進路選択のタイミングで母の看護が始まった

── コスプレを楽しみながら、芸能界への憧れを温めていたのですね。
桃戸さん:そうですね。高校では芸能活動が校則で禁止されていたため、「大学に入学したら芸能界に挑戦しよう」と漠然と考えていました。しかし、高校2年生になったころから、母のメンタルが不安定に。3年生のころは、うつ病(双極性障害)と更年期が重なり、母が家出や自殺未遂をすることが増えていきました。
── 桃戸さんへの対応も変わっていったのでしょうか。
桃戸さん:私の行動に対して、強く干渉するようになっていきました。大学進学後も自宅から通学し、母のケアに時間を注いでいたため、芸能界に意識を向ける余裕はなかったです。コスプレ活動もこのころは休止状態でした。
── お母さんをケアする日々を、どのような思いで過ごされていたのかお聞かせください。
桃戸さん:お母さん子だったので、変わっていってしまう母を見ているのがいちばんつらかったです。友人に相談することもありましたが、やっぱりすべてを話すことは難しかったですね。母は、私が大学1年のときに、自死で亡くなりました。しばらくは気持ちを整理できず、落ち込んだ日々を送っていましたが、「私は私の人生を歩まなければいけない」と少しずつ前を向けるようになっていきました。