小さいころから勉強が得意で、東京大学卒業後に芸人になった藤本淳史さん。昔から優先順位をつけるなど苦手なことがあったそうですが、6〜7年前に偶然ADHDの診断を受け、腑に落ちたことがあったそうで。(全3回中の3回)
彼女の診察のつき添いでADHDが判明

── 6〜7年前にADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けたそうですね。わかった経緯を教えてください。
藤本さん:つき合っていた彼女が転職を繰り返すなかでうつ病になってしまい、それで僕が病院につき添って行ったんです。うつの原因としてADHDの可能性があるということで医師が彼女にいろいろと質問したのですが、それが自分にもすべて当てはまっていて。「もしかして僕もADHDかもしれません」と医師に伝えて改めて診断してもらったところ、ADHDであるということがわかりました。
── それは驚きですね。それまでになにか思い当たるようなことはあったのでしょうか?
藤本さん:生活をするなかでどうして周りの人ができるのに自分はできないのだろうと思うようなことはありました。たとえば物事の優先順位を決めるのがとても苦手。重要なことを先送りにしてしまい、締切をすぎてしまうことはよくありました。出かける1時間前に起床して、出発までにやらなければいけないことはわかっているのに、なにをどの順番にやるか決められず、時間がないのにボーッとしてしまう。結果、出掛けにバタバタして忘れ物をする、ということが日常茶飯事でした。でも周りの人はそれを順序立ててきちんとできているんですよね。
プライベートでは、たとえば映画鑑賞で、自分のペースで作品を見ることができないことに、しんどさを感じていましたね。次の展開が待ちきれずに違うことを考えてしまい、気づくとストーリーが進んで困ってしまうなんてこともありました。それに対して配信作品の場合は自分のペースで早送りしたり、倍速にしたりしてしまいますね。

── 学生時代にも影響を感じることはありましたか?
藤本さん:教科書をよく忘れてしまうので大変でした。結果的に全教科をカバンに入れて、どの時間割でも忘れ物が出ないようにしていました。
あとは順序立てるのが苦手だからか、日々の課題すべてをこなすことはなかなかできなかったですね。キャパオーバーというのもあったと思いますが、高校時代は途中まで課題をやって、残りは授業中にやるなんてことがしょっちゅうでした。高校の夏休みに出た物理の課題は、今も未提出で、高校に顔を出すたびに「早く出せよ」と言われます(笑)。
僕としては、誰しも何かしらの特技があるなかで、自分が得意な「勉強」が、たまたま世の中で評価されるものだった、という感覚です。そしてそのおかげで助けられてきた部分も多かったと思います。受験生時代、僕と友人が家で何時間もゲームをやっていたことが先生にバレて友人が怒られたときも「藤本は問題が解けているからいい」と言われました。「理不尽だな」とは思いましたが、成績を保てればゲームしてもいいんだと、勉強のモチベーションにも繋がりましたね。