親が用意した道がしあわせかはわからないから

── ご自身の子育てを振り返ってみていかがですか?

 

マルシアさん:私は出産後、3か月で仕事に復帰したんです。振り返ってみても嵐のように慌ただしい日々でした。子育てを優先したつもりですが、どうしても仕事をしないといけない場合もありました。だから、娘をほったらかしにしてしまったときもあります。さみしい思いをさせてしまったかもしれないけれど、いっぽうで彼女の自立心をうながすことにつながったようにも思います。語学が好きだからひとりで外国に行くこともあったし、好きなことを見つけてしっかりとした大人になってくれました。

 

振り返れば、私は子育て中、娘に「これはダメ」と言ったことがない気がします。もちろん、命にかかわる危険なことは止めたけれど、彼女が「やりたい」ということは否定せず、すべて応援しました。いくら親がよかれと思った道を用意してあげても、それが子どもにとって幸せな道だとは限らないんですよね。実際に自分で経験して痛みを感じないと、人って成長しないと思うんです。子どもは自分自身の力で育っていき、親はそのサポートをするものであるように感じます。

 

PROFILE マルシアさん

歌手、女優、タレント。ブラジル・サンパウロ州出身。17歳でブラジルから来日、「ふりむけばヨコハマ」で歌手デビュー。数々の新人賞を獲得し、NHK紅白歌合戦にも出場。その後ミュージカルにも多数出演。圧倒的な歌唱力が評価されミュージカル初演時には「文化庁芸術祭演劇部門新人賞」を受賞。2025年2月14日(金)六本木CLAPS.で「Márcia’s Birthday Live」を開催。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/マルシア