NHK朝の連続ドラマ『さくら』でハワイ生まれのヒロインを演じた高野志穂さん。15歳まで海外で暮らし、ほとんど日本語が話せない状態で帰国したのちの学生生活は苦労の連続だったそう。2児の母となった今、当時を振り返り思うこととは。(全4回中の1回)

10歳から英国でバレエ漬けも15歳で帰国「日本語を全然話せず」

── お父さんの仕事の関係で、幼少期から15歳までをバーレーン、シンガポール、英国で過ごしたそうですね。10歳から15歳までは、高野さんご自身の意志で、英国の全寮制バレエスクールでバレエ漬けの毎日だったと伺いました。入学に反対するお父さんをお母さんが説得してくださったとか。

 

高野さん:そうなんです。正直言って、母がなぜ私の選択を応援してくれたのか、いまだに理解に苦しむ部分はありますが(笑)。長男は当時の私と同じ10歳で、自分が親になってみるとなおさら不思議で。たった10歳の娘が、自分の意志とはいえ、「バレエスクールに入りたい」と言ったことに対して、よく「いいよ」って背中を押してくれたなって(笑)。

 

全寮制のバレエスクールに在籍していたころの高野さん(前列右から2番目)

日本の学校でもない、どんな環境かもわからない、しかも全寮制の学校にひとり娘を「やってみなさい」と5年間も送り出してくれて。だって、10歳から15歳って、いちばん大事な思春期の時期でもあるじゃないですか。反対する父を、母は「彼女の人生なんだから、我々がレールを引くべきではない」と説得してくれました。ありがたかったけれど、当時の私の実力ではバレリーナになれるかどうか未知数だったし…考えれば考えるほど謎です(笑)。

 

── 15歳でイギリスの全寮制のバレエスクールから帰国。役者を志し日本の高校に進学されました。

 

高野さん:海外ではずっと日本人学校に通わず、日本の義務教育も受けていなかったので、15歳で帰国するまで日本語をほぼ話したことがありませんでした。だから、みなさんが想像する以上に日本語ができなかったと思います。

 

帰国後は、たまたま帰国子女の受け入れ枠がある高校に合格できたのですが、受験のときは帰国したばかりだから本当に日本語がわからなくて、ペーパー試験も全然できませんでした。

 

バレエスクールに在籍していた友人たちと高野さん(左から2番目)

合格できた理由としては、英国で5年間のすべてを注いだバレエスクールの先生が、私がレッスンで一生懸命頑張っていたことを推薦文として書いてくれたことが大きいです。ただ、それでも職員会議では、入学させていいのかどうか先生方の意見が大きく割れたそうです。そんなことがありながらも、学校は私を受け入れてくれました。高校自体は、本人の個性を尊重しながらやりたいことを一緒に追求してくれる校風で、先生方は私が日本語をゼロから習得していく段階も辛抱強くつき合ってくれて。ありがたかったです。

 

── 入学時から大変だったのですね。

 

高野さん:とにかく日本語がわからなくて、しばらくは授業にも全然ついていけませんでした。自分では日本語を話しているつもりでも、日本語と英語がごちゃまぜで、先生や友達は私が何を言っているのかわからなかったみたい。だから、アメリカから帰国したばかりの子が私の通訳をしてくれて、そのおかげで友達とコミュニケーションを取りながら日本語が少しずつ上達していったと思います。