「もうやりきった感じ」とまどいの中で歩んだ先

── 当時をふりかえると、1996〜1997年と2年間連続でCM女王になるなど多忙を極め、かなり忙しかったでしょうね。

 

鈴木さん:「2年半、休みがなくて大変でしたね」と、よく言われますが、マネジャーやまわりのスタッフも休みがなくて全員が大変でした。皆余裕がなくなって、バラエティ番組でいいコメントを残せなくて怒られたり…。でも、あのころは私もスタッフも、皆本当に一生懸命でしたよ。

 

── 多忙の中、心境の変化はありましたか?

 

鈴木さん: 自分の中で「やりたいことの引き出し」が枯渇した時期がありました。デビュー当時は、アメリカの少年みたいなイメージでやりたくて、次のテーマは王子(笑)で、髪型をマッシュルームボブに。こんなふうに、昔は自分のなりたいビジュアルキャラに自分を近づけて鈴木蘭々を演じて楽しんでいました。でも、それにもだんだん飽きてしまい、あるとき「次、どういう感じで行こうかなぁ」と考えたときに、何も浮かんで来なかったので、立ち止まってしまいました。

 

── やりたいことをすべてやりきった状態。たしかに、次を考えるのは難しいかもしれません。

 

鈴木さん:それで心機一転、もともとマドンナさんが好きだったし、大好きなニューヨークにも行ってみたい、と社長に相談したら、「いいよ」と意外な返事をもらったので、2か月間、ニューヨークに行きました。現地では舞台を観て、歌やダンスのレッスンを受けて、ふつうの生活を送りましたよ。

 

── ニューヨーク生活が、鈴木さんに与えた影響は?

 

鈴木さん: 日本では心のどこかで、「芸能人だから、鈴木蘭々だから」優しくしてくれているだけなんじゃないだろうか…とか考えてしまい、素直にまわりの優しさを受けとめきれない自分がいました。でも、アメリカでは、私のことなんか誰も知らなくても、私をひとりの人間として尊重してもらえて、とても嬉しかったです。アメリカ人たちの優しさに触れたのは大きかったです。

 

PROFILE 鈴木蘭々さん

すずき・らんらん。1989年、資生堂CMでデビュー。1994年に『ポンキッキーズ』で安室奈美恵とのユニット「シスターラビッツ」でブレーク。歌手、モデルなど幅広く活躍し、2年連続CM女王に輝く。2013年に化粧品会社WOORELLを起業。2023年に、芸能生活35周年記念のベスト盤『鈴木蘭々 All Time Best~Yesterday&Today~』をリリース。

 

取材・文/岡本聡子 写真提供/鈴木蘭々、WOORELL 株式会社