ウケ狙いでとった行動で退学になって

薄幸
お酒は365日飲みます

── 3回目の停学はなんだったのでしょうか?

 

薄幸さん:農業高校なので学年ごとに畑があって、季節ごとにいろいろな野菜を栽培していたんです。1年生はプチトマトで、2年生は忘れちゃったけど、3年生は大きなトマトを栽培していたのかな。あるとき、3年生が育てた粋のいいトマトを盗んで、ウケると思って授業中に食べていたんです。先生が、私がトマトを食べている姿を見て「それ3年生のだろ!」「はい、そうです」と。そこで親が呼び出されて「申し訳ないですが、退学です」と。本来、2回までの停学は大丈夫。3回目の停学はイコール退学になるらしいんですけど、トマト泥棒、要は野菜泥棒については1回で退学になる案件だったみたいですね。農業高校にとって野菜は宝なんで。

 

── トマトを盗んで退学というのは知っていたのですか?

 

薄幸さん:知らなかったですし、先生に言われて冗談だと思いました。「退学です」って言われても「またまた〜」って思ったし、ただのウケ狙いのつもりだったので。先生に促されて誰のトマトかはわからなかったのですが、3年生の農業科の教室に謝りに行ったのは覚えています。自分が悪いとはいえ、トマトを盗んで退学ってびっくりしましたが、農業高校あるある、なんですかね。時間が経ってから、同じく農業高校出身の人と話をしていたときにも、そんな話を聞いたこともあったので。

 

── 退学と先生に言われて、すぐに受け入れられましたか?

 

薄幸さん:まぁいいかなって。もともと学校をサボり気味だったし、もう辞めたかったのもありましたから。実は、小学生のころからタレント養成事務所に入っていて、高校中退の話になったときも芸能事務所に移って演技の勉強をしていたので、高校より芸能の方に興味が向いていたんですよね。私はテレビの仕事を頑張るから別に高校行かなくてもいいやって。ただ、親には申し訳ないなと思いました。親は特に怒らなかったんですけど、親と一緒に学校から退学処分を言い渡されて、その帰りに「お腹空いたね」とハンバーグを食べに行ったんです。席に座ってハンバーグを待っているときに、親の顔をふと見たらすごく迷惑をかけてるなと思って、そのときのハンバーグの味は今でも覚えています。

 

── その後はどんな生活を過ごしましたか?

 

薄幸さん:高一のころからずっとバイトをしていたので、ほぼフリーターみたいな生活ですね。通信制の学校に入って多少勉強もしましたが、卒業した記憶がないので途中でなんとなく終わってしまったのかも。

 

── 今は、ご自身の高校中退に対してどう思いますか?

 

薄幸さん:今思えば、高校は辞めない方がよかったですね。今でこそ芸人の仕事だけで食べていますが、もし違う仕事をしていたら何の資格もないし、学歴も低いし。芸人としては中卒は珍しいから、目立っていいなって思うこともありますけど、もし大学を受けられる資格があるなら、大学も行ってみたいですね。子どもが好きなので保育の勉強とかしてみたいです。

 

PROFILE 薄幸さん

すすき・みゆき。1993年生まれ千葉県出身。お笑いタレント。2011年にデビューし、2017年に安部紀克と「納言」を結成。バラエティではヘビースモーカーや大酒飲み、やさぐれキャラクターも話題に。テレ朝公式YouTube『納言・幸のやさぐれ酒場』、MXTV『Powered by TV』、SBSラジオ『週刊しゃべレーザー』などにレギュラー出演中。

 

取材・文/松永怜 写真提供/太田プロダクション