「何の役に立たなくても」経験していくことが大事
── ご自身が楽しむことを重視したとのことですが、子どもはやりたがるけど、自分は苦手という場面ではどうしていますか?
青木さん:たとえばスキーは夫(ナインティナインの矢部浩之さん)に任せています。私は一度ケガをした経験があるので。それと、私があまり得意でないのが、ぬいぐるみや人形を使ったごっこ遊び。私が幼いころから人形遊びが好きではないタイプだったので、子どもにつき合って遊ぶのはできないな、とよく思いました。「お人形で遊ぼう」と言われたら絶対拒否するわけではありませんが、「あまり得意ではない」と伝えます。子どももあまり盛り上がらないとわかると、ひとりで遊んでくれます。大人同士でも、相手が苦手でのってこないことをムリに続けようとはしませんよね。親子だからといってムリしすぎなくてもいいのかな、と自分を納得させています。
友人のお子さんが通っていた幼稚園の先生が「そんなに一生懸命、一緒に遊んであげなくても大丈夫です。ひとり遊びがきちんとできるようになった子は、お友だちと遊ぶのも上手になるから、ひとり遊びできる環境を作ってあげてください」と言われた話を聞いて、そうか〜と心がラクになりました。その先生はどんな場面でおっしゃったのかわかりませんが、こんなふうに断片的にですが言葉をいただき、自分を励ましつつ、これでもいいんだと自分を納得させながらやってきています。
── 青木さんは先ほど、もともとアウトドアに熱心でない家庭で育ったとおっしゃっていましたが、幼少期はどのように過ごしていたのですか?
青木さん:うちはちょっと変わっていたのかもしれませんが、あまり外に出ず、本をよく読む子ども時代を送りました。「勉強しなさい」と言われたこともありません。私が1月生まれで、同じ年の12月生まれの年子の妹と、ずっとふたりで一緒にいたんです。休みの日にお友だちと約束して家や近所で遊ぶのも、わが家ではあまり好まれなかったので、家や周辺で姉妹で過ごすことが多かったです。
── 本好きの少女時代。ご両親から影響を受けたことはありますか?
青木さん:私が本好きになったのは、両親の影響です。田舎の祖母の家には、岩波少年少女文学全集がそろっていました。両親も本を共有して読んでいるのが当たり前の光景。本屋さんに本を買いに行くのは、ご褒美みたいな位置づけで、私たち姉妹にとってすごくうれしいことでした。最初にはまったのは『クレヨン王国』シリーズで、新刊が出るたびに買ってもらいました。とても思い出に残っていますし、私の子育てにも影響を与えています。私も子どもたちに本をよく買いますし、プレゼントは図書カードが多いです(笑)。
── ご両親から影響を受けているのですね。青木さんのお子さんたちも、親子で経験したことが人生の支えになるといいですね。
青木さん:自分が育った環境だけでは、経験値も周囲とのコミュニケーションも圧倒的に不足している自覚があるので、それがいま、子どもたちと一緒にいろいろやるモチベーションのひとつになっているのかもしれません。チャレンジしたことがない分野が多いので、苦手意識を感じないというのもあるでしょう。おかげで、どんなこともフラットに選ぶことができます。体験はいい意味で、積み重ねだと思います。子どもに関われる期間はじつはすごく短くて、親ができることもすごく少ないのですが、きっとどこかに積み重なっていき、息子たちの人生に通じるはずです。
── 日常での、経験の積み重ねを大切にしたいです。
青木さん:子育てでしんどくなるのは、「やらなければ」と思って、やったことの結果がそんなに目に見えないところではないでしょうか。ここが親を苦しめると思います。私たちは、すぐに結果が出ることに一喜一憂し、短期的に成果が出ることを、つい子どもにもさせたくなりますよね。
でも、体験前と後で、何も変わらないこともよくあります。実際に、科学館に連れていったから、理科に興味を持って成績がよくなるわけでもないし、「いろんなところに連れていってもらった」経験が、将来どう作用するのかもわかりません。それでも、いっけん何の役に立っていないように見える体験を積み重ねていくことも、大事だと信じたいですね。
PROFILE 青木裕子さん
あおき・ゆうこ。埼玉県出身。慶応義塾大学卒業後、TBSテレビにアナウンサーとして入社。『サンデージャポン』や『News23X』をはじめ、バラエティ・報道・スポーツ等多くの番組を担当。2012年末にTBSテレビを退職し、フリーアナウンサーとして活動をスタート。2児の母としての経験から、2024年に『3歳からの子育て歳時記』を出版。
取材・文/岡本聡子 写真提供/青木裕子、株式会社レプロエンタテインメント